新日本は72年1月にアントニオ猪木が創業。今年3月で旗揚げ40周年の節目を迎える業界最古参のプロレス団体。05年11月にユークスが創業者の猪木から51.5%の株式を取得し(その後100%保有)、新日本を子会社化した。ユークスの11年1月期の連結業績は売り上げが50億4800万円。12年1月期の予想売り上げは49億8400万円で、ややジリ貧状態が続いている。そのうち、新日本の売り上げはここ数年11億円ほどで推移している。
一方のブシロードは07年5月に設立されたばかりの若い会社。08年7月期の売り上げは3億6200万円だったが、その後は25億4000万円(09年7月期)、32億7100万円(10年7月期)、64億9100万円(11年7月期)と驚異的なスピードで急成長。今年度は12年1月の中間期で売り上げ60億円を超える見込みだという。商品のひとつである「ヴァンガード」のテレビCMでは、ミュージシャンのDAIGOがイメージキャラクターとして起用されている。
木谷社長はもともと、大のプロレスファンとして有名。昨年5月5日には東京・後楽園ホールでブシロード主催興行を開催し、K-1戦士の長島☆自演乙☆雄一郎のプロレスデビュー戦を実現させた。8月には「G1クライマックス」の冠スポンサーとなって、新日本と急接近。その際にユークス谷口社長と会食し、新日本買収を打診し、交渉が続けられていた。木谷社長は「世界一のプロレスリングカンパニーを目指す。“打倒WWE(米国最大手のプロレス団体)”をしたい」と高らかに宣言した。
今回の買収劇はユークスの経営状態が決して悪いわけではなく、勢いのあるブシロードに後を委ねた形で、前向きな身売りといえる。これで、新日本がより良い経営環境になることが期待され、今後に注目が集まる。
(落合一郎)