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日本人メジャーリーガーはどうなる? 「西岡剛=ツインズ」 米国版「和の野球」で、100得点&三塁打量産も

 ミネソタツインズとは、どういうチームなのか−−。ロン・ガーデンハイア監督は、昨季の『アメリカンリーグ最優秀監督』にも選ばれた名将だ。就任9シーズンで6度の地区優勝を果たしているが、プレーオフでは結果を出し切れていない。そんなツインズが西岡を獲得したのは「当然」と思えると同時に、ちょっと「意外」でもあった。

 ツインズの昨季のチーム本塁打は「142」。30球団平均は「158」だから、長距離タイプの補強も考えられた。しかし、チーム総得点は「781」。この数値はアメリカンリーグ中地区1位であり、強力打線を誇る同・東地区のヤンキース(=859得点)はともかく、レイズ(=802)、レッドソックス(=818)と比べても大差はない。ヤンキース、レッドソックスはチーム本塁打数が200本を越えているが、30球団トップの257本塁打を放ったブルージェイズのチーム総得点は「755」だから、「142本、781得点」のツインズが、いかに得点効率の高い攻撃をしているかが窺える。だが、ツインズの「チーム総盗塁数は68」。これは中地区ワーストだ。俊足タイプの野手が少なくても、ツインズの高い得点効率には影響しなかったとも言える。
 オフの補強で「長打力のあるバッター」を補うか、「盗塁」のできるスピードプレーヤーを獲るのか…。ビル・スミスGMは大方の予想を裏切って、「スピードプレーヤー=西岡」のポスティングに参画したのである。

 いや、当然か…。2010年、ツインズは本拠地を『ターゲット・フィールド』に変更した。ドームから屋外に、人工芝から天然芝に変わった。旧本拠地『メトロドーム』は東京ドームのモデルともなったスタジアムで、アメフトなどの他競技にも使用されてきた。そのメトロドーム・ラストイヤーの2009年のチーム本塁打数は「172本」。メトロドームと『ターゲット・フィールド』の広さはほとんど変わらない。なのに、本塁打の減少したのは、「野外になってボールが飛ばなくなったからだ」という。確かに、『ターゲット・フィールド』元年の昨季、同球場でマークしたツインズナインの本塁打数は52本。年間チーム総本塁打数は「142本」だから、90本をアウェイ(他球場)で放った計算になる。
 「ホームランが減ったことでツインズナインの新球場に対する評判はあまり芳しくない」
 米メディア陣の1人がそう言う。
 屋外の新球場をもろともしない『大砲』を獲る−−。そんな見方が支配的だったため、西岡の獲得は「意外」に見えたのだ。おそらく、ガーデンハイア監督は本塁打の出にくい新球場の利点を生かすため、俊足タイプの1番バッター候補が欲しかったのだろう。

 「相手チームをナーバスにさせたい」
 これは、ガーデンハイア監督が西岡の獲得が決まった直後、米メディアに寄せたコメント。「ナーバスにさせる」の真意は、単独スチールだという。
 西岡の役目は「盗塁」。そのためには「高い出塁率」も同時に求められる。あくまでもデータ上の結果論だが、千葉ロッテ時代の西岡は単独スチールの成功率が高い選手ではなかった。それでも、「西岡が対戦投手をナーバスにさせられる」と、スミスGMとガーデンハイア監督が期待を寄せるのは、『日米間の野球の違い』も計算してのことのようだ。
 一般論として、メジャーリーグの投手は日本人投手のようにクイックや牽制が巧くない。また、パ・リーグ5球団のスコアラーも指摘してきたが、西岡は「ベースランニングの巧い選手」でもある。某在京球団スコアラーによれば、バッターボックスから三塁ベースに到達するまで「11.0秒〜11.2秒」とのことで、「メジャーリーグに入ってもトップレベルの数値だ」と話していた。
 スピードプレーヤーが対戦投手をナーバスにさせる打順は「1番」である。昨季まで1番に入ることの多かったスパンを2番か、7番に下げ、西岡は「1番・セカンド」でメジャー・デビューすることになるだろう。
 盗塁を強く意識する西岡。一塁から一気にホームまで走り抜けるベースランニング。ガーデンハイア監督は「西岡1人で100得点、三塁打量産」の期待をかけているという。千葉ロッテ時代とは少し違うスタイルを見せてくれそうだ。

 懸念材料もいくつかある。メジャー投手は確かに日本人投手のように、クイックも牽制も巧くない。しかし、左投手は「ボークと紙一重」のようなトリッキーな牽制球を投げてくる。日本の高校野球的な目線で見れば、そのほとんどは「ボーク」だろう。西岡が日本時代の目線を捨てられるかどうかが、ポイントとなる。また、「スピードプレーヤー」の先輩であるイチローが、年間50個以上の盗塁をマークしたのは、01年のみ。「1番バッター・イチロー」が積極的に走ろうとしない真相を考えてみる必要もありそうだ。
 守備に関する不安要素もないわけではない。身体能力の理由で、日本人にはメジャーで遊撃手は勤まらない」との声は多く聞かれた。その点は二塁手でデビューすれば問題はないが、メジャーにおける併殺プレーは“危険”だ。身体が頑丈でガッチリしている岩村明憲も、併殺崩しを狙った一塁走者にスライディングで吹っ飛ばされている。西岡もそんな“洗礼”を浴びせられるのではないだろうか。守備の巧い選手だから仕方ないのかもしれないが、千葉ロッテ時代は片手捕りの緩慢プレーも多かった。ガーデンハイア監督はそういうプレーを嫌う。

 打撃面で不安材料を挙げるとすれば、一時期的にメジャー独特のムービングボールに戸惑うこともあるだろう。ただ、西岡は俊足なので、それを内安打に変えてくれるはずだ。

 日本人内野手を振り返ってみると、松井稼頭央は苦しみ、井口資仁、岩村は成功したが、長くは続かなかった。米メディアは「接触プレーを考えると、日本人内野手は体格差で厳しい」「人工芝球場の影響で打球を待って捕る悪癖もある」と勝手に思い込んでいる。否定できないところも確かにあるが、日本人のような俊敏な動きのできる内野手は、米国でも決して多くないはずだ。肩の強さでは確かにかなわないが、一塁送球のコントロールなら、日本人の方が上だ。西岡には2年以上続けて活躍してもらいたい。そうすれば、米国側の日本人内野手に関する一方的な誤解も解けるのだが…。(スポーツライター・飯山満)

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