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噂の騎士(ナイト)第8回『青春の80年代と糟糠のキャバ嬢』

 まだ自分が20代の頃、東北出身のキャバ嬢と少しの間、その頃は赤い色の車両だった丸の内線の、新中野駅近くで同棲していた。

 店ではエリカと呼ばれていたようだったが、本名は似ても似つかない、どこにでもある名前だった。決して顔は美形ではなかったが、ミニスカートが良くフィットしたちょうど良い格好の長い脚線はくるぶしの細さが際立っていた。また、寄せて上げた胸の谷間と、後姿は本当にコークのボトルみたいな綺麗なカーブが挑発的な印象のコだった。

 知り合ったきっかけは、バイト先の先輩に連れて行ってもらったキャバだった。初めて接客してくれた彼女が、自分以外は知っている筈もないイギリスのロックバンドのファンだったことで話が大いに盛り上がったからだった。それから、4か月くらいで一緒に住み始めた。

 当時の自分は、週日は喫茶店のウエイターと、土曜のビルの清掃で稼いだ金をバンド活動につぎ込んでいた。とにかくいつも金欠だったが、それを忍びないと感じたことは皆無だった。彼女といえば、週6日出勤して日に10本以下に指名を落とすことが無かったそうだ。当然彼女の収入は、毎月それ相当な金額ではあったと思う。

 彼女の週一回の公休日は、疲れて眠っている彼女を不条理に起こしては、セックスした。強制的な青い性欲にしても、時々、彼女から待ち望まれているようにさえ感じた。いつも彼女から溢れ出た愛液と自分の精液で、取り換えたばかりにシーツをすぐに洗濯する羽目になった。とにかく快楽と無用心で避妊など到底考えられなかったあの頃は、彼女の生理周期が遅れると決まっていつも言い合いになった。ヒモのような生活はしないと思いつつも、結局は彼女のお金を当てにするようになった。

 エリカはいつも何も言わずに、自分の財布へ1万円札と千円札を何枚か入れてくれていた。短い同棲生活の終わりを感じ始めた頃、たった1度だけプレゼントをした。当時流行の三連リングを受け取る彼女の目の奥に、すごく愛しいが、それ以上に憂いが感じられた。暫くして彼女は去っていった。「結局、性格が不一致だったから」、なんて歪ませた口実で自分を納得させていた。

 彼女がいなくなった部屋で、自分の高慢と身勝手に気付いたときは随分と時間が経っていた。それから、また更に25年以上にもなるが、いろいろなキャバに行く度に、「この中で何人かのキャバ嬢たちが、あのときのエリカと自分と同じような物語を経験しているのだろうか」と想像することがある。そして、あの頃の不埒さが無性にしゃくに障る。

 短い間でも自分に与えて続けてくれた無償の愛情は、ずっと忘れられない。特に80年代の歌謡曲、一曲一曲に込められたいろいろな彼女の想い出が、恋しくてたまらない。

*写真は本文とは関係ありません

【記事提供】キャフー http://www.kyahoo.jp/

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