前回のファームでの登板となった先月30日のヤクルト戦でも、先発としてマウンドに上がり101球を投げ、「変化球でカウントが取れた」と、いつも以上に多投した変化球に自信を覗かせていた。この日の投球内容を踏まえ、首脳陣からはあくまでも速球が中心の組み立てを望む声もあったと言うが、長いイニングを投げ、持ち味をより際立たせる為には今後、どれだけ変化球をピッチングに織り交ぜるかにかかっているのではないだろうか。
またそれ以外でも、潜在能力はすでに一軍の舞台でも披露されている。プロ初登板を勝利で飾った6月12日の対広島カープ戦では、5回を投げ4安打1失点、初回からストレートで押し続け、84球を投げ切った。最後のイニングとなった5回のピッチングでは、打ち取ったものの、打球を外野深くまで運ばれていた中で球速は146kmまでを記録、直球で三振も奪った。浮き上がるような伸びのあるストレートのキレも抜群だったが、その球筋は正確に打者の外角を突いていた。この日奪った4つの三振は、何れも決め球は外角のストレート。背番号18を背負うルーキーのもう一つの武器として、コントロールの正確さも挙げられるはずだ。
「やっぱり一軍のマウンドは違う。相手打者をギリギリで抑えられたことで、楽しみながらマウンドに上がれた」とはプロ初勝利直後のコメント。
決して平坦ではない、ドラフト1位高卒ルーキーの1軍定着への道のり。それでも今後、吉田の特徴であるストレートを始め、その他の球種も磨き、さらに、それらを投げ分けるコントロールとピッチングの幅を、より広げることができる要素が十分であることが垣間見えてきた。
7日の試合では悔しい結果に終わった吉田だが、報道によると中継ぎとして翌8日の試合にも登板するといい、これを一軍再昇格への“追試”と見る向きもある。投手陣の台所事情が楽ではなくなる夏場、吉田輝星の躍動する姿が、再び札幌ドームのマウンドで観られる日はそう遠くないかもしれない。(佐藤文孝)