中国人有名女優も商品のボイコットを表明。不買運動が広がり、D&Gはたった一晩で中国市場をすべて失ってしまった。
ネット通販最大手『アリババ』グループや2位の『京東集団』(JDドット・コム)のサイトでは、D&Gの商品を検索しても別ブランド商品が表示されるようになった。同様に非難されるのを恐れたサイト側が、D&G商品の表示を取り扱わなくなったためだ。
D&Gの広告動画は、日本でもテレビ映像で流されたように、アジア系の女性モデルが箸を使ってピザやパスタを食べる内容だ。ネット上で公開後に「侮辱的な内容」との非難が相次ぎ、21日の上海でのファッションショーが急きょ取りやめになった。
一方、中国メディアによると、イタリア在住の中国人らが21日夜にミラノの店舗前で抗議活動を展開した。中国外務省の耿爽副報道局長は22日の記者会見で、一連の騒動に関して「外交問題に発展しないよう望む」と述べたが、実はイタリア人は、自国への中国の買収攻勢に怒っているのもこれまた事実なのだ。
「一般ユーザーとステファノ・ガッバーナのDM上でのやりとりが『ダイエットプラダ』の投稿の中に表れ、『中国は無知で汚いニオいがするマフィアだ』というやり取りが交わされたとされました。そして、この投稿の2時間後、ブランドの公式アカウントで『ブランドとステファノのアカウントがハッキングされました』といった内容と、中国への謝罪文が投稿されたのです。でもイタリア人は腹の中では皆そう思っていますよ」(欧州在日本人会社員)
イタリアの名門サッカーチーム『ACミラン』を中国人実業家、李勇鴻(リ・ヨンホン)氏が、元イタリア首相で同クラブのオーナーだったシルヴィオ・ベルルスコーニ氏から買収し、オーナーに収まったのはいいが、今秋になって脱税や汚職などの容疑で中国当局に身柄を拘束され姿を消してしまった。買収資金は虚偽だった。いいかげんもいいところだが、もっと深刻なのはD&Gも無関係ではない皮革産業の衰退だ。
「イタリアはすでにフィレンツェの隣町、古都プラトーの皮革工場などが中国人に乗っ取られ、イタリアの有名ブランドの輸出の多くが華僑の利権となっています。プラトーには、いつのまにか5万人の中国人が住み着き、学校へ行くと半数以上が中国人子弟となっています。同国は人道上、移民排斥ができないため、なすすべがありません。安い中国製品に席巻された皮革産業は、若い人が職人になっても食っていけず離職、高齢化により衰退の一途をたどっています」(同)
アドリア海の内湾に入り込んだイタリアの港、トリエステは、古代ローマ時代から軍事要衝だったが、ここに中国が大規模な投資、インフラ建設に参入した。これにイタリアのメディアが騒ぎ出した。
「中国がピレウス港を買収(ギリシャは借金のかたに同港を取られた)したように、トリエステ港は中国に奪われるのではないか」「スリランカの例にあるように、将来軍事基地となるのでは」「NATOと対立をあおる結果にならないか」――。楽天的なイタリア人から、こうした悲観的見通しが出ること自体珍しいが、すでにプラトーでの現実的な中国の脅威を経験しているからだろう。
ジョルデティ官房長官は会見で、「われわれはギリシャのように破産していない。イタリアの土地は一寸たりともチーノ(中国)には売り渡さない」と言うものの、それがどれほど危ないカネであっても、その魅力には逆らえない。これが投資力・購買力を背景にした中国シャープパワーの威力なのだ。