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本好きリビドー(3)

◎快楽の1冊
『養鶏場の殺人/火口箱』
ミネット・ウォルターズ/成川裕子=訳
創元推理文庫 900円(本体価格)

 ミネット・ウォルターズは1949年生まれの女性作家だ。世界規模で英国ミステリー界の女王として高い評価を受けており、ここ日本でもかなりの数の愛読者がいる。海外ミステリー・ファンの間では誰もが知っている存在だ。かつ、特にミステリーというジャンルにこだわりを持たない人も満足させることは間違いない。その幅広いエンターテインメント性には風格、貫禄が漂っていると言っていいだろう。
 本国で'92年に刊行されたデビュー長篇は『氷の家』というタイトルで'94年に翻訳版が出た。以後『女彫刻家』『鉄の枷』『蛇の形』等、邦訳が継続されてきた。そして、多くの作品が宝島社の『このミステリーがすごい!』など、毎年発表される各種ミステリー・ベスト・ランキングの上位に入ったのだった。
 謎解き小説としての説得力あるプロット、それなりに筋が通った推理の過程がなければ、もちろんミステリーとは言い難い。その課題を達成しつつ、ウォルターズは犯罪が起きる要因を総じて複雑な人間関係から見出し、描き切る。洞察力がとてつもなく魅力だ。
 さて本書は長篇ではなく、二つの中篇が収められている。ゆえに重量感には欠けるが、コンパクトで鋭いウォルターズらしさを楽しめるのである。一話目の「養鶏場の殺人」は1924年に実際に起きた事件を元にして書かれたものだ。突如失業してしまった青年ノーマンは養鶏場の経営を試みるが、一向にうまくいかない。交際している女性エルシーは結婚を迫ってくる。その強引さで余計に疲弊感が増し、殺意にまで至る。「火口箱」は狭い村で起きた殺人事件の謎を、普通の主婦が探偵役になって解明しようとする。いずれの作品も、やはり人間関係が犯罪と密接に結び付けられている。関係の歪みや破綻が恐ろしい結果を生み出すことは珍しくない。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎昇天の1冊

 パンチラといえば、エロメディアの代表的な表現方法の一つ。春は女性たちが重いコートを脱ぐ季節でもあり、がぜんチラリズム本も増えてくる。
 『顔を近づけてガン見してみました』(インテルフィン/752円+税)も、そうした1冊。ムックとして発売されており、中身はJKのヒップやフトモモに肉薄したキワドイ写真が満載だ。
 登場するモデルは、全員が綿素材の白いパンティーを着用し、撮り方はデルタを強調。ローアングルから秘部を仰ぎ見た、ヘアヌードよりもずっと煽情的なカットも少なくない。
 パンチラには、生脚&清楚な白いパンティーをテーマとしたJKモノや、セクシーなストッキング&高級下着で魅せることを中心としたOLモノなど、いくつかのパターンがあるが、いつの時代も人気が高いのはJKらしい。股間を隠すホワイトの綿パンティーに性器の“スジ”が浮き出るよう、「定規の端を擦りつけて下着に“スジ”を作る」(男性誌の編集経験者)など、工夫して撮影しているらしく、制作スタッフのこだわりも半端ではない。こうした苦労が長い間ファンに支持される理由でもあるのだろう。
 とはいえ、カメラ付き携帯の普及に伴い、女性のスカートの中を秘密裏に撮影する一部の不埒な盗撮マニアが横行。パンチラ本は犯罪を助長するメディアとして、社会的には決して褒められた内容のものとはいえなくなってきており、愛好家は肩身が狭いだろう。
 家でこっそり鑑賞し、楽しむだけにとどめよう。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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