オリックス時代のイチローが94年に210安打したのが日本記録で、2位が07年のヤクルト・ラミレス(現巨人)の204安打、3位は05年のヤクルト・青木宣親の202安打。過去に3人しか記録できなかったシーズン200安打以上。それが、今季は一挙に3人もが達成する。異常事態だろう。
阪神、ヤクルトが残り10試合もあるので、マートン、青木にはイチロー超えの日本新記録の期待がかかる。残り5試合のロッテ・西岡もどこまで積み上げられるか注目される。
快記録ラッシュはファンにとって大歓迎だろうが、球界関係者、OBにとっては、単純に喜べない。「投低打高。シーズン200安打が3人も出るなど投手受難時代の象徴だ」と投手出身の球界OBが眉をひそめ、こう続ける。
「打者はバッティングマシーンの進歩などで、いつどこででも十分な練習ができる。ウエートトレーニングすれば、体力もいくらでも強化できる。が、投手の肩やヒジは消耗品で、鍛えるといっても限度があるからね。来年から大リーグの使用球に近い、飛ばない統一球を使い、ホームランは減るだろうが、ヒットの数は変わらないだろうからなあ」と。
日本プロ野球界史上初のシーズン200安打トリオ誕生は、投手受難時代の象徴で、素直に拍手を送るわけにはいかないというのだ。セ、パの実力格差から問題視する球界関係者もいる。
「パ・リーグの日の丸エースたち、日本ハム・ダルビッシュ、楽天・岩隈、田中、西武・涌井、ソフトバンク・杉内らを相手に200安打を記録するロッテ・西岡には手放しで称賛を送る。が、広島・前田以外はエースと呼べるような実力のある投手がいないセ・リーグの投手と対戦しての200安打のマートン、青木は、西岡と同列に扱うのには抵抗がある」。
今季のセ、パ交流戦で露呈してしまった、歴然たる「パ高セ低」という実力格差。その事実を前にすれば、200安打トリオにも序列があるという指摘だ。耳を傾けるだけの価値はあるかもしれない。ロッテ・西岡には、マリナーズ・イチローからの喝もある。シーズン210安打超えの方でなく、イチローの持つ猛打賞年間26回の日本記録に並んだ件だが…。
「抜いて喜べ、って言っておいて。早う抜け、って。どこを見てんだ、オレの。ムネ(ソフトバンク・川崎宗則)と変わんねえぞ、それじゃ」と。
イチローの持つ日本記録のシーズン210安打超えを阪神・マートン、ヤクルト・青木が達成して新記録を樹立したとき、イチローからはどんなリアクションがあるのか。これも乞うご期待だ。日本プロ野球界史上初の1シーズンでの200安打トリオ誕生は、様々な波紋を呼ぶ。