管理する橋口調教師はかつてダンスインザダーク、ハーツクライなど多くの名馬を育て上げ、ビッグレースを手にしてきた。しかし、前記の2頭でさえ届かなかったのがダービーだった。ともに2着。「ダービーを勝てたら調教師を辞めてもいい」というほど夢舞台への思いは強く、すべての情熱をクラウンに注ぎ込んできた。
その前にある重要な関門が皐月賞だ。ここでコケたらダービーの夢なんて霧消してしまう。それだけに仕上げに妥協はない。1週前は8日に武豊騎手を背に、栗東坂路で行われた。800メートル51秒9→38秒1→12秒6の好タイム。インダストリアル(古馬500万)を0秒7追走して軽々併入に持ち込んだ。
「ムキにならずいい調教ができた」と武豊が笑みを浮かべれば、橋口師も「強めにやったけど、申し分ない動きだった」と笑顔を見せた。
今回はきさらぎ賞からぶっつけ。クラシックを狙うには異例のローテーションだが、これは前走で500キロまで落ち込んだ馬体重を回復させるのが狙いだ。「1週前の後で514キロあるから、輸送を考慮しても500キロを割ることはないだろう」とベストウエートで送り出せそうだ。
3強対決が濃厚と見られる今年の皐月賞。特に師は昨暮れのラジオNIKKEI杯2歳Sで完敗したロジへの対抗心をむき出しにする。
「おれの信条はやられたらやり返す。ダンスやハーツと比べても完成度ならクラウンが一番だと思ってるし、借りを返してダービーに行く」
希代の快速馬サイレンススズカをイメージさせる西のスピードスターが、3強時代を早々と終えんさせ、1強にして夢舞台に臨むつもりだ。