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〈企業・経済深層レポート〉 町家がマンションに変貌 中国資本の進出で破壊される京都の街並み

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提供:週刊実話

 中国系企業が京都の伝統的古民家「町家」を大量に購入していることが明らかとなった。
「町家」とは、京都に建てられた職住一体型で、ウナギの寝床のように細長い敷地を最大限に活かした建築物だ。その歴史は古く、江戸時代の中頃に原型ができあがったとされ、京都の伝統的な景観を形成している。
「昨年、中国出身の米国籍投資家が営む投資会社が、町家12軒をまるまる購入したとメディアで報道されました。同社は、町家の内装をリフォームして、民宿として利用するという。今後、中国系企業に町家が次々と買い占められ、ホテルやマンションが増加すると思われます。京都の景観が大きく棄損されるのではという懸念の声が出始めています」(不動産アナリスト)

 同アナリストによれば、京都の町家を中心に中国人による不動産買い占めは、昨年1年で120軒にものぼったという。

 一体、京都で何が起きているのか。

 事の発端は、「町家」の空き家率の上昇だ。
「町家は京都の暑い夏にも対処する工夫がなされていますが、それでもマンションやアパートに比較すれば暑くて住みにくい。維持費もかかりますし、親から子供が受け継ぐ際には、相続税も発生します。そのため、子供世代は町家を離れ、マンションや新築一戸建てに移っているのです。結果、現在の空き家率は10%を超えつつあります」(不動産業界関係者)

 そこに登場してきたのが冒頭の中国資本などの海外投資家たちだ。なぜ、彼らは京都の町家に目をつけたのか。不動産アナリストは、その理由をこう分析する。

「まず、単純に日本が好きだからですね。特に京都は、中国と比べて、歴史的なものがきれいに守られているので、中国人にとっては憧れであり、特別な場所なんですよ」

 中国の公的調査では、日本は中国人主要不動産投資国ランキングの4位にランクインされている。JETRO(日本貿易振興機構)が行っている中国人意識調査でも、“今後行きたい国・地域”として、日本は’17年に引き続き’18年も首位だった。

 また、中国人にとって京都は、お買い得な「不動産投資先」としての面もあるという。
「香港の平均住宅価格は世界一高く、ついで上海が世界3位、北京も高騰しています。中国の住宅と比較しても、京都の物件は格安なので、自国の都市と比べても、京都は格安の投資先です。今後は東京オリンピックや大阪万博など、ビッグイベントが目白押しなので、物件を購入して宿泊施設やマンションといった商業利用すれば、利益がのぞめると睨んだのでしょう」(同)

 結果、現在のように中国資本による大量の購入が始まったのだ。しかも、この流れは当分治まる気配がない。
「無許可宿泊客まで含めると、京都に訪れるインバウンド客は年間1000万人を超えるとするデータもあります。消費額も年間2700億円前後。現状で宿泊施設が足りていないというのに、今後もさらにインバウンド客は増えることが予想されます」(同)

 町家を手放したい人が増え、反対に宿泊施設やマンションの需要が高まっていることを考えると、さらにこの流れは加速していくだろう。

 とはいえ、京都市も町家が中国人に買収され、伝統的な景観が壊れていくのを黙って見ているだけではない。
「京都市は、積極的に空き家になった町家の保存・活用を考えています。’17年には『京都市京町家の保全及び継承に関する条例』を制定しました。これは、個別の建物や区域を京都市が指定し、指定されると解体に着手する1年前までの届け出が義務付けられるとともに、充実した支援を受けられるというものです」(京都市役所関係者)

 京都市には、同条例のように古い民家の保存をうながす規制はあるのだが、重要文化財級の町家であっても、それを確実に守り抜くような仕組みにはなっていない。
「専門家が“重要文化財級の建物”と評価していた京都の最古級町家『川井家住宅』(西ノ京)が解体されマンション用地となってしまいました。不動産開発会社が土地や建物を川井家関係者から買い取ったのは’18年3月。その後、それを知った京都市が仲介に入り保存に向けて奔走しました。業者も市に協力して保存方法を模索しました。しかし、最終的には不調に終わり、昨年8月末に建物は解体されてしまったのです」(同)

 このままだと、町家は次々と商業施設化し、京都は近代的な街へと変貌してしまう。そうならないためには、国が率先して京都の国土と文化を護る動きを強めていくべきなのかもしれない。

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