事件が起きたのは、ショッピングセンター内にあるATMコーナー。店内に設置された防犯カメラの映像には、AさんがATMを操作している最中に問題の女が近づいてきたことが確認されている。女は推定20〜30代で、2歳ぐらいの幼児を胸に抱きかかえていた。
何度か周囲の様子を確認した女は、いきなりAさんの肩にわざとらしく衝突。そのまま、女はAさんの身体をまさぐるような仕草を始め、Aさんの財布を盗み取ろうとした。それに気づいたAさんは必死に抵抗し、二人はつかみ合いの状況になる。
この時点でAさんの窃盗行為は確認されていないのだが、女が「泥棒」と大声で叫んだことにより、店員や買い物客らは状況を大きく勘違いしてしまう。大声で助けを求めた女のもとに駆け付けた客と店員ら3名は、「子連れの女性を襲う男性」という認識でAさんを取り押さえた。
そこに別の万引き事件の処理で居合わせた地元警察官2名が到着。取り押さえていた3名に代わり、Aさんを窃盗の容疑者として拘束した。Aさんは「違う」と無実を主張し立ち上がろうとするも、警察官はAさんの頭と上半身を力任せに押し付けて制圧。応援の警察官が駆け付けるまでの20分間に渡り警察によるAさんの拘束は続けられたという。
この時、Aさんは拘束により過度のストレスを受けて嘔吐、失神をしていたが対応した警察官は気づいていなかった。
20分後、応援に駆け付けた警察官がAさんの異変を確認。あわてて救急車を要請するも既にAさんは心停止状態だった。搬送先の病院で治療が施されたが、翌18日にAさんは死亡した。
そして、Aさんが握っていた財布は女の所有物であるという警察の判断により、被疑者死亡のままAさんは窃盗容疑で書類送検されてしまう。
後に警察は、防犯カメラの映像などから証拠を集め、女を虚偽告訴罪・窃盗未遂の容疑者として捜査する方針に切り替えるも、一向に女の消息を掴むことは出来ず。2011年2月17日には女の窃盗未遂事件における公訴時効が成立し未解決事件となった。
ちなみに、時効が成立した3か月後になってようやく財布の所有者がAさんであることが地方検察庁に認定される。事件から7年、既に女の時効が確定した段階になってAさんの無実が証明されることになった。
白昼のショッピングセンター内で堂々と窃盗行為を働く女。警察が公開した顔写真は不鮮明なためか非常に不気味な顔つきをしている。一体、彼女は何者だったのだろうか。