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新重賞今昔物語〜十年一昔編〜 1999年エプソムC

 究極の“サイン馬券”といわれた2001年の有馬記念。その年の9月11日、米ニューヨークで同時多発テロが発生した。その悲劇の残像が色濃く残る中で行われたグランプリは誰もが目を疑う大波乱になった。

 1着マンハッタンカフェ、2着にアメリカンボス。3番人気だったマンハッタンはまだしも、アメリカンボスは13頭立ての13番人気。テイエムオペラオー、メイショウドトウといった強豪を退けた瞬間、「有馬=世相」というキーワードを再認識させられた。
 あの結果で一発屋のイメージが完全に定着したアメリカンボスだが、そのキャリアは確かに山あり谷あり。重賞初Vとなった1999年のエプソムCも何と11番人気での勝利だった。
 梅雨のはしりのジメジメした時季。2開催続いた東京競馬場は、最終日ということもあって馬場は相当荒れていた。しかも、古馬の一線級は安田記念や宝塚記念に向かうため、メンバーもどんぐりの背比べ。というわけで、エプソムCは例年、荒れる要素満載のレースなのだが、とりわけこの年はすごかった。

 道中は5、6番手の好位を進んだアメリカンボスが力強く抜け出し2着に1馬身4分の3差をつけ快勝。その2着には9番人気のシグナスヒーロー、さらに3着は14番人気のリワードニンファが突っ込んだ。1番人気のレガシーハンターは後方で動けず9着惨敗。2番人気のツクバシンフォニーも4着に入るのが精いっぱいだった。
 当時は3連複も3連単も、ましてや馬単もなかった。配当は馬連の3万7760円が目立つ程度だったが、もし3連単があったら1000万円を超えていたかもしれない。とにかくメガトン級の大穴だった。
 そんなアメリカンボスを語るとき、欠かせないのが主戦を務めた江田照だろう。彼が初重賞勝ちを収めた90年の新潟記念、サファリオリーブからして14番人気だったが、重賞全25勝のうち、実に8番人気以下が10勝。最近はちょっと元気がない「穴の江田」の奮起にも期待したいところだ。

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