犯行の経緯は、およそ次の通りである。まず、8月10日の午前10時半頃、根本は自分から連絡して早苗さんを自宅まで車で迎えに行った。
そして、わずか数時間後に安芸区内の路上に停めた車内で早苗さんの首を絞めて殺害。その際、まず両手で首を絞めた後に、さらに布製のガムテープをねじってヒモ状にしたもので締め上げて、早苗さんを絶命させた。
それから根本は、夜になるのを待って遺体を黒いポリ袋に詰めてから、広島県熊野町にある山道のガードレール下に投げ捨てた。
その後になって、早苗さんの母親にメールを送って現金を要求。夫に銀行口座に入金させた後、JR福山駅近くをたまたま通りかかった男性に「トラブルがあって自分では現金を下ろせない」などと言って頼み、ATMから引き出させたのだった。
だが、この男性の証言と早苗さんの携帯電話から、根本は居所を特定される。
殺害の動機について、根本は当初、「自分の仕事について早苗さんから『定職についていない』と指摘された。これがもとでケンカとなり、腹が立ってとっさに彼女の首を絞めて殺した」などと供述していた。
しかし、確かに早苗さんの遺体には、首にヒモのようなもので絞められた跡はあるものの、抵抗したような外傷はなかった。また、事前にガムテープのヒモを用意し、殺害後に整然と身代金要求をするなど、とっさの犯行にしては手際がよかった。そこで警察がさらに追求したところ、「早苗さんを殺してカネを奪うつもりだった。クルマの購入や遊ぶカネが目当て」と認めた。
根本は無類のクルマ好きで、犯行に使ったのもドイツ製の高級輸入車だった。そして、カード会社や消費者金融などから数百万円の借金があることも判明した。
2004年12月17日、広島地裁は根本に殺人や死体遺棄、恐喝などの罪で、懲役18年を言い渡した。これに対して根本は控訴したが、2審でも「卑劣極まりない犯行。情状を勘案しても1審判決が重いとはいえない」として1審判決を支持、控訴は棄却された。
根本にとって、早苗さんはただのカネヅルでしかなかった、ということであろうか。(了)