各メディアの報道では、およそ5万人が押し寄せたとされる今回の配布。詰めかけたファンが様々な箇所に並んだため、周辺の交通は完全にマヒしていたという。
また、想定を大きく上回る人出を受けた球団は途中で配布を休止したが、もらえなかったファンからは抗議の声が殺到。影響を受けた警察やJRからも苦情が寄せられたという。
転売目的による大量購入を防ぐため、「先着順」から「抽選制」に舵を切った広島。もちろん、この試み自体は評価されてしかるべきものであり、これまで“風物詩”となっていたテント村が消滅するなど効果もそれなりにはあったようだ。
ただ、ここで解せないのは、せっかく決めた方策をどういう訳か現地で行ったこと。チケット入手が非常に難しくなっている近年の状況を考えれば、今回のようにファンが大挙して押し寄せることは十分に想定できたはず。それなのになぜ、ネット抽選などではなく、現地での手渡しにこだわったのだろうか。
全ての申し込みをネットで完結させれば、サーバーの混雑・ダウンこそあれど、少なくとも現実世界で混乱が起きることはない。もちろん、手間とコストがかかる方法であることは重々承知だが、それを差し引いても採用する価値はあったはずだ。
また、ネット環境が無い、もしくは使い方が分からない人も一定数いることを考えると、はがきやFAXで受付をするのも一手と考えられる。申し込みの際に記載された個人情報をそのまま本人確認手段に用いれば、安易なチケット転売の阻止にもつながっただろう。
今回の一件を受けたネット上を見ても、同様の意見を訴えている人は数多く見受けられる。再びこのような事態を起こさないために、そして、せっかくの人気に水を差さないために、球団側は現地での手渡し以外の策を講じる必要があるのではないだろうか。
文 / 柴田雅人