その一角に、不審な人影がうごめいていた。マンションの片隅から2階へとよじ登り、ベランダへと這い上がる。それから窓に手をかけると、そのままスーッと開いた。鍵はかけられていない。その不審な人影は、30歳くらいの男だった。そして、注意深く部屋の中に入っていく。
室内には、20代と思われる、若い女性が眠っている。彼女の近づく男。
すると、男は布の袋のようなものをポケットから取り出すと、眠っている女性の頭にすばやくかぶせた。
「!」
何が起きたのかわからず、驚いて目を覚ます女性。すると男は、いきなり女性の首を絞めた。
(苦しい…、助けて…)
首を押さえつけられ、声も出なくなっている女性の耳元で男は脅した。
「大声を出すな。殺すぞ」
そして、男は用意したビニールテープで彼女の手首を縛った。
女性の自由を奪った男は、乱暴に彼女の寝巻を引きちぎり、下着をはぎ取った。それから、思う限りの乱暴を続けたのである。
別のある日、都内某所のマンションの一室。やはり深夜に、男の手で玄関が開けられる。
男が部屋の中に入っていくと、浴室からシャワーの音が。近づく男。やがてシャワーが止まり、脱衣所に上がってくる女性。そして、いきなり浴室の戸が開けられる。
(誰なの!)
悲鳴を上げる時間も無く、布袋を頭にかぶせられ、押さえつけられる女性。裸でどうすることもできない。
「殺されたいのか。おとなしくしろ」
そのまま、彼女は暴力的に犯された。
また別の日、千葉県のあるマンションの一室には、女性のパジャマや下着が散乱していた。ベッドの上には、乱暴されぐったりとした裸の若い女性。その姿を、ビデオカメラで舐めるように撮影する男の姿があった。
ひと通り撮影すると、乱暴した女性を放置したまま、侵入した玄関から去っていった。
1997年頃から、東京都江戸川区や板橋区、千葉県市川市などで、一人暮らしの若い女性ばかりを狙った婦女暴行事件が連続して発生していた。
その手口は、深夜に鍵がかかっていない玄関や窓から侵入し、女性の頭部に布製の袋をかぶせて目隠しにして犯行に及ぶという、実に卑劣なものだった。(つづく)