市場関係者は「トヨタには秘めた魂胆があるに違いない」と指摘する。燃料補給に欠かせない水素ステーションは、まだ全国に19カ所(計画中を含めても31カ所)。ガソリンスタンドはもちろん、電気自動車用の充電スタンド(約6000カ所)にも遠く及ばない。価格も800万円前後を想定しており、相当に割高。そんなFCV普及に向けたハードルが高い中、トヨタが派手なアドバルーンをぶち上げた真意を訝っているのだ。
「トヨタの狙いはズバリ、2020年東京五輪のフル活用です。現状ではFCVの定着は容易じゃない。そこで東京都の舛添要一都知事とタッグを組み『五輪の目玉は環境に優しいFCV』とばかり、政府に水素ステーションの設置を働きかけている。この建設には1カ所4〜5億円掛かり、血税をテコにインフラ整備が飛躍的に進めば、トヨタは先行の利が得られるというのです」(同)
東京五輪開催に向け、確かにトヨタの存在感が高まっている。ある財界関係者は「五輪開催時には経団連会長となって『スポンサーは名実ともにトヨタ』になるだろう」と打ち明ける。FCV普及での五輪活用には「公私混同」の謗りを免れないが、ディーラー首脳は苦笑する。
「トヨタに続けとばかりにホンダや日産が相次いでFCVの市場投入を表明した。両社とも東京五輪に照準を合わせており、それまでの間はトヨタに水先案内人をさせ、世間の批判の矢面に立たせるが、五輪を機においしい汁はタップリいただこうとの作戦です」
この世界、全く油断も隙もない。