含みのある言葉でそう語るのは、関東系半グレ幹部のX氏。
東京都渋谷区で高齢者夫婦が縛られた末に400万円を奪われ、江東区では住人が殺害される事件まで起こったことで、にわかに「アポ電強盗」の悪名が轟いた。だが、逮捕された容疑者グループの手口は、あまりにもだったとX氏は指摘する。
「そもそもアポ電をやるならターゲットに金を用意させた後、もう1本だけ嘘の電話をかけるなどして家を留守にさせ、空き巣を狙わないと意味がない。金の受け渡しのときのリスク回避のためにアポ電しておきながら、それよりもはるかにリスクの高い“緊縛強盗”をするなど本末転倒です。おまけに殺害まで犯してしまうと、100%逮捕は免れないし、(服役)何十年コース確定ですよ」
ただ、あえて容疑者グループがそうせざるを得なかった理由として、ターゲット宅に金庫がある可能性が高いと、読んだのではないかと同氏は考察する。
「ターゲットと電話した際に、相手の口ぶりなどから『それなりに裕福な世帯だな』といった感触があったのでしょう。ということは家に金庫がある可能性が高く、金を用意させて空き巣に入ったとしても、簡単に運び出すことはできない。それならば『縛り上げて金庫の番号や金の隠し場所を吐かせたほうが早い』と、短絡的な犯行に走ってしまったのです」
とはいえ、普通に考えて高齢者であれば数百万円程度の預金があるのは珍しくもなく、強盗をして捕まった際の量刑に見合う額でもない。
いずれにしても「コンビニ強盗同様の愚かな犯行」だと同氏は吐き捨てる。
「裏社会では十数年前からタタキ(強盗)が流行していて、ヤクザ、闇カジノ、詐欺業者あたりは常に奪ったり奪われたりを繰り広げています。そういう意味では、脱税金を貯め込んでいるキャバクラやホスト経営者も同様に狙われてましたが、いずれにせよこれらは“表に出せない金”だから、縛り上げて奪っても問題ないわけです。その手口だけを真似て、一般人を的にするなど愚の骨頂。容疑者グループは、刑務所の中でも馬鹿にされて過ごすでしょうね」