同日緊急会見に臨んだ橋下氏は、吹っ切れたような笑顔でこう宣言した。
「市民の皆さんに受け入れられなかったのは、やっぱり僕が間違っていたということなんでしょう」
「市長の任期満了まではやりますけど、それ以降は政治家はやりません」
だが、敗北宣言がなされたばかりの地元・大阪では、これとは真逆の噂が飛び出している。橋下氏は確かに市長辞任と政界引退を口にしたが、「このままむざむざと引き下がるはずがない」「政界を去るというのは、橋下氏一流のブラフ」とする声がかまびすしいのだ。
在阪の政治部記者がこう話す。
「確かに、橋下氏は『政治家人生は終了です』と会見で発言した通り、12月の市長任期満了をもって政界から引退するでしょう。だが、その一方では再三、今後の身の振り方を問われ、『僕は自分では何も決められない人間なので…』と意味深な受け答えもしている。これが、“ブラフ論”を加速させているのです。だいたい、あの執念深い橋下氏が反対運動を展開し、都構想の息の根を止めた公明党や自民党大阪府連、それに自主投票の体を取りながら、会員が反対運動に奔走していた創価学会に、やられっぱなしで引き下がると思いますか? やられたらやり返すが橋下流。中央政界にも『橋下氏の大逆襲劇が始まる』との噂が走っているのです」
要は、悲願を潰えさせた公明党や創価学会、自民党府連に対する意趣返しが展開する可能性が急浮上。これが起きた場合には、その攻勢は苛烈を極めるだろうと推測されているのである。
大阪維新の会の関係者が言う。
「早ければ、その第一矢は今後橋下氏の任期満了で起きる大阪市長選時に放たれるはずです。大阪維新の会は大阪府議会で44人、市議会で36人を擁し第一党の地位を占めているが、約半数は橋下人気で当選した議員で、これらを見捨てるわけにもいかない。そのため、大阪維新の会から市長候補を擁立。支援に回り、自公候補の撃破を狙うと見られているのです」
つまり、復讐劇の第一弾は、橋下氏の辞任後に行われる大阪市長選。その際には同氏の因縁の相手が自公の推薦で出馬してくると見られ、すでに住民投票を凌ぐ死闘に発展する可能性も指摘されているのだ。
「その死闘の相手と見られているのが、'11年の市長選で争った平松邦夫元市長なのです。その選挙時に自民党は民主党と共に平松氏を後押しして敗北したが、橋下氏が政界を離れたことを維新を潰す好機と見た公明党が相乗りしてくる可能性もある。そのため、公明党や自民党府連に対する憎悪著しい橋下氏は、この殲滅に動くことはほぼ間違いないと見られている」(同)
また、その一方では公明党と創価学会を駆逐する“復讐劇”も予想されていいるという。語るのは、橋下氏の側近議員だ。
「実は、党内では市長辞任、政界引退のミソギを済ませた後、橋下氏が来年7月の参院選に大阪選挙区から出馬する案が、住民投票の結果が出る前から囁かれていた。都構想実現が潰えたことは大きな打撃だが、逆に橋下氏が国政に打って出る最大のチャンスだからです。また、この戦術は公明党と創価学会を蹴散らし、維新が国政を担う絶好の機会でもあるため、地盤沈下が囁かれる維新内でもその決断が期待されているのです」