芸人の仕事にはネタ作りも含まれるため、文章に才能を発揮する者が少なくない。
「もっとも知られているのは、『火花』(文藝春秋)で芥川賞を受賞したピースの又吉直樹でしょう。実質的な小説デビュー作でそのまま受賞しましたので、その力量がうかがいしれます。浅草キッドの水道橋博士も、敬愛する竹中労にならって“芸能界に潜入したルポライター”を自認し、『お笑い男の星座』『藝人春秋』シリーズ(ともに文藝春秋)など多くの名作を書き上げていますね」(芸能ライター) 又吉や博士ばかりではない、意外なところで文才が発覚した芸人もいる。
「90年代に『電波少年』シリーズ(日本テレビ系)で、『電波少年的懸賞生活』に挑んだなすびは『懸賞日記』(日本テレビ放送網)で、全裸で過ごす日々をつれづれなるままに綴りました。この番組からは多くの書籍が出ましたが、元祖といえる『猿岩石日記』(同)が誤字脱字で作文調だったのに対し、なすびは過酷な日々を洒脱な文体で綴り、文才が感じられます。同じような境遇では、マシンガンズの滝沢秀一がいます。彼は現在、家族を養うためゴミ清掃会社に正社員として就職しています。一方で、学生時代から中上健次や村上龍を愛読する文学青年であり、『群像』(講談社)の新人文学賞では、最終選考手前の四次選考まで残り、話題となりました」(前出・同)
さまざまなキャラ付けがなされる「◯◯芸人」が頻出して久しいが、文才芸人は地味ながらも、確かな力のある存在といえるかもしれない。マシンガンズ・滝沢の文学賞受賞に期待したいところだ。