「彼は食べログを、普通の人とは全く逆の使い方をしていました。同アプリはユーザーの評価が投稿されていますが、彼の場合、特に評価が低いお店にあえて行くんです。ある日のデートも、食べログで調べた評価1クラスの居酒屋に連れて行かれました」
その日は、週末の夕方だったというが、店には客が1人もいなかったという。
「扉を開けると、奥には店主と思われる初老の男性が、スポーツ新聞を読みながら座っていました。そして、こちらに気がつくと『え? 客?』と驚いた様子を見せ、『いらっしゃいませ』の一言もありません。それで、一応席に座り、注文を頼もうとしたのですが、食べ物は餃子しかないとのこと。
それで、仕方なくビールと餃子を2人分頼んだのですが、グラスは茶色く黄ばんでおり、出てきた餃子もパサパサしていてとても不味かったです。低評価も納得でした。
彼が言うには『良い店ばかり行っていると、本当に美味しいものや、ありがたみがわからなくなる』という考えで、低評価の店に行っているみたいなんですが、その考えにわざわざ私を巻き込んでほしくなかったと思いましたね。ミシュランほどのお店は期待しませんが、せめて普通のお店に行きたかったです」
外食では常に美味しいものを楽しみたいと考えていたありすさんにとって、彼の考えは理解できず、やがて疎遠になったという。
写真・ariel jatib