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川口能活と楢崎正剛 二人から溢れた眩い笑顔

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画像はイメージです

 12月2日、ギオンスタジアムのピッチ上に二人のゴールキーパーの笑顔があった。
川口能活(相模原FC)と楢崎正剛(名古屋グランパス)。

 この日を最後に現役を退く、川口の引退セレモニーのサプライズゲストとして楢崎が花束の贈呈に訪れた。歩み寄った両者はしばらくの間、言葉を交わす。満面の笑みの二人は何度も握手し、肩を抱き合った。

 「ライバル視された中でも僕は追いかけるだけだった」という楢崎に対し、「楢崎正剛は特別な選手。彼がいなければこの年までサッカーを続けられなかった」。

 リスペクトの気持ちを贈り合う二人の言葉。当人同士のみならず、サッカーファンにとっても幸せな時間が流れていた。

■若くして世界の舞台を踏む

 年齢では一つ違いの両者、プロ入り後すぐ、共に所属クラブでのレギュラーとして頭角を現す。

 そして、早くから日本代表にも選出された。ワールドカップ、そしてオリンピックの舞台にも立った川口、楢崎の歩みは、Jリーグ発足以降の日本サッカーの歴史を映し出していると言っても大げさではないだろう。そんな二人の関係を、多くのサッカーファンがライバルとして捉えることも自然な流れだったかもしれない。特に1998年まで行われてきた、楢崎が所属していた横浜フリューゲルスと川口の横浜マリノス(ともに当時)の「横浜ダービー」は、両雄がゴールマウスに立つことで異様な雰囲気と緊張感が生まれたことを覚えている。

 初出場から3大会に渡り二人がゴールマウスを守ったワールドカップでも、十二分に存在感を示した。初のW杯となったフランスでは川口が果敢に世界に挑み、楢崎は日韓大会、自国でのピッチ上で日本を初勝利に導く。そして、ドイツ大会でも川口が日本代表を鼓舞し奮い立たせ、楢崎も動じることなくチームを支えた。

■尊敬の念に包まれたライバルにファンも

 プレイスタイルも去ることながら、最も対照的だったのはその表情か。

 十代のころよりピッチ上においては穏やかな笑顔と、闘志を全身で表現し声を荒げることも少なくなかった川口に対し、ビッグセーブや失点時でさえもポーカーフェイスを崩さなかった印象の強い楢崎。ファンにとって様々な面で興味が尽きなかった。

 二人の偉大なGKはかつてのインタビューでも、互いについて「正剛がいなかったらもっと早く現役を辞めていたかもしれない」、「(川口は)ライバルというよりお手本」と言葉を残している。比較され続けながらも、いつの時代でも同様の感情を抱き、そしてリスペクトの気持ちも持ちつづけていたことは明らかだ。

 セレモニーで川口から「まだ続けて下さい」と言葉をかけられた楢崎は、来年も現役続行の意思を表明しており、他クラブへの移籍も囁かれている。日本サッカーを支え、引っ張り、世界の舞台に押し上げた二人のゴールキーパーがこれからどのような歩みで進んでいくのか、まだまだ目が離せない。彼らの笑顔からそんな思いが浮かんだ。(佐藤文孝)

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