「いや本当に、こういう馬にはなかなか巡り合えないよ。だからこそ、何とかひとつタイトルを取らせてやりたいんだ」
ビリーヴなどの名馬を育てた松元師が惚れ込む逸材、それがアルナスラインだ。
GI勝ちはおろか、重賞勝ちすらない。だがそれでも、GIを取れるだけの実力があると確信したのは昨年の菊花賞だった。長期休養明けをひと叩きされただけで、まだピークのデキには至っていなかったが、勝ったアサクサキングスをアタマ差まで追い詰めた。
前走の目黒記念も惜しい2着だったものの「58kgのハンデを背負いながら、馬場の一番悪いところを走らされた。それで直線でササッてしまった。でも、勝ち馬とは0秒1差でしょう。やっぱり走るなと思ったよ」気持ちは揺るがなかった。
師が何より評価するのはそのファイティングスピリットだ。「毎回、全力で能力を発揮してくれる。大崩れしたのは新馬とエリカ賞ぐらいで、それ以外は常に上位争いをしてくれている」
それに加えて、この中間はデキがいい。「間隔をじっくり取って、しかも今回が走りごろの叩き3走目。うまく調整できた」
前走後は疲れも出たが、そのあたりはいつものことでしっかりケアされた。
順調さを欠いて休養が長引いてしまった菊花賞の後、前々走のメトロポリタンSの後も脚元はすっきりしなかった。それに比べれば、デビュー以来、最も順調にきたといってもいい。
「GIはすべてがうまく運ばないと勝てない。うちのはまだオープン特別しか勝っていないから、確かに分は悪いかもしれない。だけど、それでも、今回は楽しみなんだ」
実績より、勢い。松元師は手のひらにずっしり、勝利への手応えを携えている。
【最終追いVTR】和田騎手を背に坂路で単走。前半はゆったり入ったが、追い出してからの末脚は迫力満点。前走時に見せていたハミで遊ぶ仕草も出さなかった。馬はすっかり戦闘モードに入っている。