◎プロ野球オープン戦
▽3日 京セラドーム大阪 観衆9,893人
オリックス 3-3 DeNA
▽4日 ほっともっとフィールド神戸 観衆6,851人
オリックス 3-4 DeNA
オリックスが今季初のオープン戦を、3日に京セラ、4日にほっと神戸の本拠地にDeNAを迎えて、2連戦を行った。勝利を挙げることはできなかったが、この2試合で最もファンの印象に残ったのは、2014年に横浜隼人高からオリックスにドラフト2位で指名されて入団した、高卒4年目の宗佑磨だ。
春季キャンプでは2軍スタートとなった宗だが、1軍メンバーに混じって行われた紅白戦で結果を残し、最終クールで1軍に昇格すると、センターのレギュラー最右翼だった後藤駿太がインフルエンザで離脱したこともあり、首脳陣に内野手から外野のセンターへコンバートを命じられた。昨年秋のフェニックスリーグで外野を守ることはあったが、これはあくまでも若手内野手に競争意識を持たせるための起用だった。
ギニアの血が流れている宗の身体能力、潜在能力は、チームの中ではトップクラス。体の線が細いことや、怪我が多いことに苦言を呈する声も少なくないが、昨年秋に怪我をしてから、春季キャンプの間に少し体が大きくなっていた。内野手から外野手に転向して成功した例として、現役時代に宗と同じ背番号6をつけていた田口壮2軍監督がいる。ファームでは田口監督や米村理チーフ兼打撃コーチが中心に指導にあたり、フルスイング打法を確立させてから、逸材が開花することに期待を込めて一軍へ送り出している。
そして迎えたオープン戦。
3日は、1番センターで先発出場すると、DeNA先発のバリオスが2球目に投じたストレートを捉えて、ライトのスターダイナー(レストラン席)を直撃する先頭打者ホームラン。5回にはDeNAのドラフト1位ルーキーの左腕、東から強烈な進塁打を放つと、7回の打席ではセカンド内野安打。さらに盗塁にも成功した。
続く4日の試合でも、1番センターで先発出場し、初回にDeNA先発、熊原からレフト線を破る打球を放つと、レフトの守備がもたつく間に全力疾走し、ホームイン。なんと、ランニングホームランという形で、2試合連続ホームランを記録した。これはオープン戦とはいえ凄いこと。7回にはDeNAの左腕セットアッパー砂田のカーブを上手く拾って二塁打を放ち、三塁に進塁するとギャンブルスタートを見事に決めた。名手、大和の送球より足が優ったというのは、価値ある走塁といえるだろう。
バッティングや走塁では猛アピールに成功した宗だが、不慣れな守備のミスは2日間とも目立った。首脳陣は捕球ミスに関しては「試合で覚えてもらえればいい」としばらくはお咎めをしない方針。しかし、送球ミスに関しては「やってはいけない」と福良監督は厳しく指摘した。ただ、今回のアピールにより、福良監督や首脳陣の評価はうなぎ登り。
「宗はここから駿太と(レギュラーを)争わなきゃいけなくなるけど、(一歩)抜けてますね」
そう語る指揮官に、1番センターの適性はあるのか?という質問が飛ぶと「ありますよ。長打力があるし、足も使える。相手チームが嫌がるバッター」と宗の成長に目を細めた。
「いまはとにかく集中しているので、余計なことは考えないようにしてます」と話す宗だが、「開幕一軍は絶対に勝ち取ります」と自分自身に言い聞かせるように、目をギラつかせていた。このギラついている宗に、ファームで調整中の後藤、そして昨年ブレイクした武田の3人によるセンターのレギュラー争い。長年センターラインが固定されて来なかったオリックスなだけに、この争いは非常に興味深い。現時点では、福良監督が話しているように、長打力、走塁力をアピールし、左投手からも結果を出している宗が頭ひとつ抜けている。
この2連戦で、西、山岡の開幕投手争いや、ドラフト1位ルーキー田嶋の初対外試合よりも、インパクトを残したのは宗佑磨というオリックスの新たな“希望”だったのは間違いない。
文・取材 / どら増田
カメラマン / 萩原孝弘