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夜を棄てたキャバ嬢たちVol.2〜OLに戻った悦子〜

 長い不況がつづく中、“副業”の位置づけで夜の世界に入る人は少なくない。現在、派遣社員として大手ECサイト運営会社で働く悦子(仮名・24歳)が、神奈川県某市の私鉄沿線にあるキャバクラに入店したのは今から約1年前のこと。

 奈良県出身の悦子は地元の短大を卒業後、自宅通勤を前提に、とある中堅住宅設備関連商社に入社する。半年に及ぶ研修の末に総務部に配属され、それなりにOL生活を満喫していた。ある時、平穏な生活を送っていた悦子に転機が訪れる。神奈川方面への転勤を内示されたのだ。
 「いやぁ、あの時は本当にビックリしました。入社時に、営業所単位での異動はあるという話は聞いていたのですが、それでも自宅から通えるところとばかり思っていたので、青天の霹靂とでも言うんでしょうね。両親とも不仲になるので修羅場でしたよ」

 悦子の両親はいわゆる過干渉型。県外への転勤を認めないと、毎晩のように悦子と口論となり、ついに会社にまで乗り込む大騒動に発展。悦子の上司が両親をなんとか説得し、転勤を認めさせる方向でカタが着いたが当然社内での評判はガタ落ちとなった。
 さらに、神奈川県内の営業所に着任直後、出るはずだった住宅手当が支給されないことが判明。家賃が全額自腹になったことで生活は一気に苦しくなった。
 「それまで親元にいたので、お給料の半分を家に入れても大丈夫だったんですが、家賃の他に水道光熱費を払うと、手元には4万円程度しか残らないんですよね。いくらなんでも、食費含めてひと月4万円は厳しすぎました。それで、週末だけキャバ嬢をしたんです。お給料も日払いですしね、ホントに助かりました」

 悦子はその後、転職を決意するといくつかの転職支援のエージェントに登録。転職活動は思うようにいかなかったが、持ち前のバイタリティでなんとか糸口は見えたようだ。現在の職場は予定紹介派遣で、もうまもなく正社員としての雇用が確定するという。
 「面接の時に事情を説明したら、いたく同情されてしまいました。今回は、住宅補助もきちんと出るそうです。あ、しばらく奈良に帰るつもりはありません。両親が会社に乗り込んだのもそうなんですが、いろいろ思い返すとちょっと距離を置いたほうがいいかなと思いまして」

 そんな悦子に、キャバでの仕事について聞いてみるとこんな答えが返ってきた。
 「ほとんどがヘルプだったので別にというか。でも、物怖じしなくなったのはキャバでの接客があってこそでしょうね、面接での度胸がつきましたから(苦笑)。別に長く働くつもりもなかったのであっさり辞められました。大きい街の大きい店じゃなかったですしこんなもんかなぁと」
 悦子が深入りせずにあっさりと夜の街を去った理由は、こんなところにあるのかもしれない。

取材・文/三枝めぐみ…キャバからパーティーアテンダントまでありとあらゆる水商売を経験後、小さなキャリアコンサルタント会社に入社。ライターとしても活動中。ツイッターは@MegumiSaegusa

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