反日デモの際、上海のユニクロ店舗が「尖閣諸島は中国固有の領土」と中国語で書かれた紙を貼り出すと、国内では「もうユニクロの商品は一切買わない」「日本から中国へ出て行け」などの非難を浴びた。
当時、ユニクロは「警察からの指示。『すぐに貼り紙を出せ』と命令され、店長がやむなく従った」と釈明したが、柳井会長は政治家の靖国神社参拝に否定的な“親中派”とあって「店長の独断説」に懐疑的な向きが少なくなかった。
あの暴動で“中国リスク”を痛感した一部の日系企業は、中国からの撤退を本気で考え始めているが、柳井会長は冒頭の発言に続き「反日デモがあっても、中国に対する見方や生産拠点としての役割は変わっていない。日本と中国は良好なパートナーであるべきだ」と強調。いくら同社商品の約8割が中国で生産されているとはいえ、“中国命”を地で行くのめり込みは尋常ではない。
「国内ユニクロは店舗数が既に820店を超え、新規出店余地は限られている。そこで限られたパイの国内市場は低価格専門店に特化したグループ会社のジーユーに任せ、ユニクロは巨大市場の中国に活路を求めるシナリオを描いた。世間から中国に媚びていると非難されようと、中国との心中覚悟で深入りするのはそのためです」(関係者)
ユニクロは中国工場に膨大な先行投資を行った。撤退しようにも、まだ投資マネーを回収できていない。かねての「中国製品を日本で売って利益の8割を稼ぐ中国企業」の異名は、図らずも今回の尖閣問題を機に、その実態があぶり出された格好と言えるだろう。