目の前に座った3人組が目を輝かせながらそれぞれの女の子の顔を覗いている。
「ええ〜っとね、私は…」
「はい、ストップ! ユキナには聞いてません!」
「ちょっと〜! どうゆうことよ!」
「お前はチャラチャラしてるからこっちからお断り」
「絶対に遊んでるじゃん、お前。実際のところ経験人数どれくらいなの?」
「そんなの言えるわけないでしょ!」
言えない、言えない、絶対に言えない。本当は恋愛経験が少ないことなんて死んでも言えない。中学時代に好きだった男の子と手を繋いで帰ったのが唯一のお付き合いだってことも、大学のとき酔っ払った勢いでサークルの先輩に処女をささげたくらいしか経験がないことも、絶対にこの場で言えるわけがない。
見た目が派手ってだけで、チャラいとか遊び人だと思われるのも不服だけど、本当は恋愛経験が少ないのに恥ずかしいからって理由だけで隠している自分自身にも嫌気がさす。
「でも、意外とユキナちゃんってマジメっぽい気がするけどね」
3人組のうちのひとりが、そうポツリとつぶやいた。女の子も含め、その場にいた全員が「そんなわけないじゃん」と笑っている中、彼はひとり、黙々と話し続ける。
「だって恋愛の話になるとたまに恥ずかしそうな顔してるからさ、可愛いなと思って」
“可愛い”という言葉に異常なほど反応してしまい、おもわず下を向いてしまった。ああ、こういう部分を見て私が恥ずかしがっているってわかったんだな…。
「でもそういう子って計算も駆け引きもしない純粋な子が多いから、俺は好きだけどね」
彼のその一言で、恋愛経験の少ない私は耳まで真っ赤にして前を向くことができなくなってしまった。
取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
http://ameblo.jp/lisa-ism9281/