「松井はこのオフにヒザを手術しましたよね。その手術が終わったのを待っていたのかのように評価がガクンと下がったわけです。ランクCだそうですから、レギュラー維持が難しいし、放出も有りうるという厳しい状態に置かれたことになります」
ニューヨーク在住の日本人ジャーナリストは最新情報としてショッキングな内容を明かす。内視鏡で手術をしただけ、と日本では軽く見がちだが、大リーグでは大きな問題というのだ。
このジャーナリストは続けて「大リーグでは手術を決して軽く見ません。どんな小さな手術でも実際にプレーをするところを確認しないと信用しませんよ。だから選手の成績には、必ず欄外に故障者リストの結果が明記されます。手術した選手は途端に厳しい環境と直面するわけです」
これまで松井秀の本場での評価は「打撃がいい選手」だった。それが今季は安定感に欠けた上に守備、走塁を含めた総合力では「Bクラスの下」程度という厳しいもの。その象徴が守備で左手首を骨折したプレー。多くの大リーガーは「信じられない拙いプレー」と首をかしげたものだった。
それでもレギュラーを張れたのはトーリ監督の“お気に入り”だったからである。「個性派が多いヤンキースの選手を使うのにトーリ監督は苦労していた。その中で松井は実に素直で指示を黙って聞くし、実に使い易い選手だった。口さがない連中は“トーリのペット”だったからね、とも言ってる」と松井番の日本人記者は言う。
だが、そのトーリが契約問題でこじれヤンキースを出てドジャース監督に鞍替えした。大きな後ろ盾を失った松井秀が不安のどん底に落ち込んだことは容易に推測できる。
トーリが辞めた後、ニューヨークのマスコミは「かなりの選手がトーリの後を追ってドジャースに移るのではないか」と予測した。ところがその候補たちが次々とヤンキース残留を決めた。MVPのロドリゲス、捕手でシーズン最後にはトーリの代理監督を務めたポサダ、抑えの切り札リベラらである。
「一時は松井秀もトーリの後を追うのではないか、といわれたが、残留に落ちついた」と松井番記者。
しかし、来季の松井秀を取り巻く状況はかなり厳しいと言う声が強い、と同記者。「ヤンキースのスタインブレナー・オーナーは積極的にチームの衣替えをしようとしている。果たして松井秀が新生ヤンキースのレギュラーメンバーに入っているかどうかは疑問です」と付け加える。
守備は三流の評価だけに常時出場は難しい。指名打者にしてもジアンビがいるから長打力でかなわない。となると代打ということになる。既に若い外野手を手当てしたという情報もあるし、トーリの後を追ってドジャース移籍もありうる。そんなウワサまでちらついているという。
松井サイドからは「ヤンキースとの契約は残っているが、それでもトレードは可能。常時出場が本人の一番の望み」との声も聞こえてくる。
同じ日本人選手でも田口壮一やリトル松井(稼頭央)らは球団移籍の経験がある。それだけたくましい。その点、ゴジラ松井は免疫がない。「松井秀は移籍経験者にいろいろアドバイスを求めているそうですよ」と松井番記者は言う。それほどランクCは厳しいのである。