実施した場合、ビールに比べ税率が安い発泡酒や第3のビールの値上げは避けられない。呑ん兵衛の大半が「我々を狙い撃ちした増税」と受け止めかねず、「来年夏の参院選を戦えない」とする政府・与党が先送りしたとされている。
とはいえ、参院選の日程は以前から決まっていた。それを承知で政府は、今年の夏ごろからビール会社などと一本化の協議を進めてきた経緯がある。
永田町関係者は「自民党税調のドン更迭が大きく影響している」と指摘する。
'09年以来、自民党税制調査会の会長としてニラみをきかせてきた野田毅衆院議員が先ごろ党税調の最高顧問に“棚上げ”され、後任の会長に宮沢洋一・前経済産業相が就いた。
更迭の直接の理由は「再来年4月の消費税10%引き上げの際、野田議員は公明党が唱える軽減税率の導入に難色を示していたため」(前出・関係者)とされるが、「元私設秘書が覚醒剤使用の疑いで逮捕されたことが引き金」(別の関係者)との声も…。
いずれにせよ、野田センセイこそが酒税一本化論者の急先鋒であったため、更迭と同時に先送りになった格好だ。
そもそも政府・与党の基本方針は「将来的に酒税の格差を縮小する方向で見直す」ことだった。その落としどころは350ml缶あたり55円程度。税収を維持するために算出した数字だが、現在の酒税額、ビール77円、発泡酒46.98円、第3のビール28円から言えば、発泡酒や第3のビールファンには酒税55円は重い。
だが「しばらくは、そんな心配は無用かも」と、ビール会社OBが苦笑する。
「参院選だけじゃない。いずれ衆院の解散があり得るし、統一地方選挙もある。それにビール4社は、ビール比率が高いアサヒ、サッポロと第3のビールの比率が高いキリン、サントリーの思惑が激突し、互いが政府に“けん制球”を投げまくっていますからね」
選挙対策というなら、10%増税そのものを“チャイナショック”のせいにして先送りしたらどうか。