斎藤で敗れた試合とは、4月24日の対明治大学戦。しかも、早大・應武監督はプロ注目の速球派右腕・大石達也(4年生)をリリーフに送り込んでいる。エース級の投手2人をつぎ込んでの敗戦は早大ナインにも精神的ダメージを残したようだった。
「(味方打線が)2安打じゃあね。投手を見殺しにしてしまった…」(同監督)
記者団の質問が途切れたその直後に出たのが、冒頭の『チキショー発言』である。明治もエース・野村祐輔を先発させたとはいえ、その悔しさは取材する側にも伝わってきた。
この日の敗戦が何故、ドラフト会議の指名に影響を与えたのか? 理由は2つある。1つ目は、斎藤を「エース対決で勝てる投手かどうか」で、プロ野球スカウトは1位指名の最終判断を下そうとしているからだ。
「直球は、甲子園に出場していたころがいちばん速かったかもしれない。かといって、好不調に関係なく、先発投手としての責任イニングを投げきる総合力には捨てがたいものがある。斎藤はチームが勝つことを最優先に考えるタイプで、極端な話、99点取られても、味方が100点取っているのなら、それでいいと思っている。勝つことに強い意識を持っている投手だと思う。しかし、1学年下の野村に競り負けてしまい…」(在京球団スカウト)
味方打鍵の援護がなかったとはいえ、明治・野村との『エース対決』に敗れたことで、斎藤の評価は下降した。
2つ目の理由だが、それは「應武監督にある」という。
「應武サンは社会人・新日鐵君津監督時代、ソフトバンク・松中信彦、千葉ロッテ・渡辺俊介など6人をプロ野球界に送り込んでいます。育成の手腕には一目置かれてきました」(前出・同)
應武監督の契約期間は今季で満了を迎える。早大監督を退く予定だが、「同監督の再就職を斡旋した球団が、斎藤を単独指名する」なんて“ウワサ”もないわけではない。同監督は 「(会社員としての籍がある)新日鐵に帰るだけ」と、そのウワサを完全否定している。しかし、新日鐵グループは各地の野球部を廃部やクラブチーム化させており、「一介の会社員では、野球人・應武として満足できないのではないか?」といった声も囁かれている。
「千葉ロッテは、1月早々に斎藤の1位指名を公言しています。ロッテの球団副代表の石川晃氏は、ダイエー時代、松中を担当したスカウトだったんです。かつて、アマチュア球界の重鎮を球団幹部に迎え入れた在京球団が、石川氏との関係に割って入ってきたとの情報もある」(同)
また、今季の早大には斎藤以外にも、大石、福井優也といったドラフト上位候補も控えている。ドラフトの規約に従えば、プロ野球チーム側は現時点で当該選手と直接交渉することはできない。交渉窓口は應武監督であり、スカウトマンにすれば、「同監督の本心も知っておきたい」ところだろう。しかし、手厳しい意見も聞かれた。
「斎藤が伸び悩んでいるのは、應武サンにも理由があるのではないか?」(在阪球団関係者)
明治大学に競り負けた24日の一戦で、評価を落としたのは斎藤だけではないようだ。