男性はタクシー運転手・矢口行さん(49)で、約1週間連絡が付かないことから、同僚が様子を見に来たところ、6畳の寝室のベッドで倒れていた。男性はすでに死後、数日経っており、首、胸、腹、下腹部に刃物による傷があり、局部は切り取られて、ベッド付近の床に落ちていた。
死因は首の傷が原因の失血死とみられている。部屋は無施錠で、男性は衣類を身に着けていなかった。隣の4畳半の部屋で凶器とみられる血が付いた文化包丁が見つかっており、警視庁捜査1課は殺人事件とみて調べている。16日の時点で犯人は見つかっていないが、女性が犯人であれば、まさしく現代版阿部定事件だ。
阿部定事件とは36年(昭和11年)5月18日に、仲居であった阿部定(当時30)が、東京市(現東京都)荒川区尾久の待合茶屋で、性交中に愛人の男性・石田吉蔵さん(当時42)を殺害し、局部を切断した事件。犯人の阿部定は逮捕されるまでの3日間、切り取った局部を持ち歩いていた。当時としては、とてもショッキングな事件で、後にこの事件をモチーフとした小説や映画も数々と発表された。76年に公開された「愛のコリーダ」(大島渚監督)や、「SADA〜戯作・阿部定の生涯」(98年=大林宣彦監督)は代表的な作品だ。
現段階で犯人が女性と断定はできないが、いくらなんでも、こんな屈辱的な殺され方はされたくないだろう。とても、恐ろしい事件である。
(蔵元英二)