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夜を棄てたキャバ嬢〜ネット掲示板を読んで心を病んだ明美〜

 一時期から、個人の悪口などが飛び交う学校裏サイトなるものがメディアなどでも取り上げられ、問題視されてきた。誰もが携帯電話やパソコンで気軽にネットへアクセスできるだけに、匿名という立場での言葉の暴力が気軽に発信され、どこまでも伝染していく。そしてそれは学校だけに留まらず、今やどのような場所であってもネットの住民によって批評されてしまう現実がある。そんな時代の中、明美(仮名・23歳)もまた、務めていたキャバクラに関するネット掲示板をとても恐れていた。

 「ある日、務めていたお店の名前をネットで検索したら、夜のお店について語り合う掲示板にたどり着いたんです」

 ネット上には数多くの掲示板サイトが存在するが、その中には風俗やキャバクラ、ホストなどに特化した場所もある。そこには店の名前ごとにスレッドがたてられ、サービスやキャストについてなど客同士が容赦なく意見を述べ、語り合っている。

 「そこには自分が働いている店の掲示板もありました。書き込みを見ていくと、そこに自分の名前が書かれているのを見つけてしまったんです」

 その掲示板に書かれていたのは明美に対する心無い言葉だった。「ブサイク」「気持ち悪い」という外見を中傷したものから、「絶対性格悪いだろ」といった内面にまで切り込んだ一方的な悪口の羅列。さらに「笑った時のえくぼが気持ち悪い」という言葉を見た明美は、次の日の接客中から、自然に笑えなくなってしまったという。

 「もう誰も信用できなくなりましたね。客が書いているのか、同僚やスタッフが書いているのかどうかなんて、匿名掲示板じゃわかりませんから…」

 人間不信になった明美は店の関係者とコミュニケーションを取ることもなくなり、携帯電話を数分置きにチェックするようになった。また家の中でも熟睡することができず、深夜目を覚ましては、掲示板で自分の悪口が書かれていないか必死にチェックしたという。

 「完全に欝病でしたね。あのまま夜の仕事を続けていたらヤバかったと思います。次どこかで働くとしたら、ネットに晒されないような職場を探したいですね」

 匿名の悪口に耐えられなくなった明美は夜の世界を棄てた。現在は都内の実家に戻り、特に仕事はしていないという。
(文・佐々木栄蔵)

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