まずは、すでに南北会談で外交デビューを果たした正恩氏の実妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長だ。正恩氏が「唯一心を許す相手」とされ、シンガポールでの米朝会談では、会談場所になったカペラホテルに正恩氏に続いて入った。
気になるのは、与正氏の夫が誰なのかということ。2015年初頭に結婚しているのは確かで、ナンバー2の1人である崔龍海(チェ・リョンヘ)党副委員長の息子ではないかといわれたが、実際は地方幹部の子息らしい。とすれば至って地味だ。
次は「鉄の女」といわれる豪腕外交官の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官だ。5月下旬にペンス米副大統領を「政治的に愚鈍なマヌケ」と罵倒する談話を発表し、トランプ大統領を激怒させたことは記憶に新しい。
「崔氏は、崔永林(チェ・ヨンリム)元首相の長女で、中豪などへの留学経験があります。米朝首脳会談の前日にはソン・キム元駐韓米大使(現:フィリピン大使)率いる米国代表団と協議し、合意文の草案の最終調整を差配したといわれます」(北朝鮮ウオッチャー)
さらに朝鮮労働党統一戦線部の金聖恵(キム・ソンヘ)策略室長だ。
「金日成総合大学出身のエリート官僚で、南北閣僚級会談など『対南交渉』に長く携わってきました。ポンペオ国務長官が訪朝した際には、同行した韓国系米国人のアンドルー・キムCIAコリア・ミッションセンター長と事前協議を重ねる実務責任者でした。最初に聖恵氏が世界のメディアに捉えられたのは、正恩氏の親書を持参して、5月末から訪米した金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長(統一戦線部長)に同行した際のことで、米朝会談にでもカペラホテルでの姿が捉えられています」(同)
崔氏と違い物腰は柔らかといわれるが、統一戦線部は、米CIAと米朝会談への事前交渉を主導した工作機関であり、その実務責任者とみられることから本当の顔はそう甘くはない。
とにもかくにも、正恩委員長は北朝鮮の行く末をスカートの中からうかがっているのだ。