東洋の末世思想にしても、西洋のハルマゲドン思想にしても、人類が「未来が明るい」と希望を抱き続けた時代がいかに少なかったことか。
世紀末には、必ず破滅論が出るが、新世紀になったからといって、破滅論が希望論になるかといえば、そのようなことはほとんどない。
そのため、いつの時代も人類破滅的な大予言があり、その予言はかなりの確率で大ハズレに外れているというのが事実だ。
2010年1月発売の『恐怖の大予言ミステリー99』(双葉社刊)を元に、2010年〜2011年5月現在までの事柄についての予言をピックアップしてみよう。
●ジョー・マクモニーグルという予言者によると、2010年までに東京の繁華街に大規模な爆弾テロが起こる。
●同じくジョー・マクモニーグルによると、2010年初夏に長野県北東35キロで震度7の地震が起こる。
●サイババは自身の寿命を2024年、94歳と予言するも2011年4月に亡くなる。
●人類の現代過去未来の情報すべてが入っているとされるインドの『アガスティアの葉』によると、2010年“まで”に東海大地震が起こる。
かくのごとく、2010年1月から2011年5月現在までの予言については、なんと100%の確率で外れているのだ。
いつの時代でも予言や予知、人類滅亡といった諸説が流行り続けているのであるが、東日本大震災により、世界の多くの場所で地震の予知・予言が出てきた。
これらもピックアップしてみよう。
●5月11日、ローマに大地震が来るという噂が出た。
出どころは79年に死去したイタリアの地震学者の予言だというが、実際にはその地震学者がそのような予言をしたという事実はなく、ネット上で広まった“都市伝説”に過ぎなかった。
しかし、都市伝説は人々の不安を煽るもの。怯えたローマ市民の数千人が、ローマから疎開した。しかして5月11日。実際に地震は起きた。
ローマに…、ではなく隣の国スペインにである。
M5.1。日本ではこのレベルの地震は珍しくないが、スペインの建物は耐震性が低く、5月13日現在の情報によると少なくとも10人の死者が出た。
もし、この日、都市伝説を信じてローマから疎開しながらも被災した人がいるとしたら、皮肉としか言いようがない。
●台湾で5月11日にマグニチュード14の地震が来るという予言あり。
東日本大震災後、台湾でも5月11日にマグネチュード14の大地震が来ると予言する人が出てきた。内容は、高さ170メートルの超巨大津波が発生し、100万人が死亡するというものであった。
●アメリカのキリスト教伝道師ハロルド・キャンピングは、5月21日に世界各地で大地震が起こり【最後の審判】が来ると予言。
キャンピングの予言を信じた人は多くいて、中には予言に合わせて退職した人や、ペットは天国に召されないからと、安楽死させる人が出てきたり、ペットを安楽死させたくない信者のために、ペットを預かるというビジネスをやる業者が現れたりした。
こうやって見ると、予言なるものがほとんど外れていることがわかるが、オカルト好きの人にとっては、
a. 2010年初夏に長野県北東35キロで震度7の地震が起こる。
b. 『アガスティアの葉』によると、2010年までに東海大地震が起こる。
c. 2010年初夏に長野県北東35キロで震度7の地震が起こる
d. 5月11日、ローマに来るはずの大地震がスペインに来た。
などなどの外れた予言もすべて【当たったこと】にされてしまう。
いわゆる「惜しい! でも少しかすっているような気がするから当たっていることにしよう!」という思考法である。また、過去に当たったとされる予言のほとんどが、後になってからの【こじつけ】だったりする。
さて来年2012年12月に人類滅亡という予言もあるのだが、ここまで外れても滅亡を信じたい人がいるということは、人の心に滅亡を望む何かがあるのかも知れない。
(巨椋修(おぐらおさむ) 山口敏太郎事務所)