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「おぐらが斬る!」全米映画俳優組合ストライキ、生成AIで俳優がいらなくなる?

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16万人が加入する全米映画俳優組合のストが続いている。俳優組合の主張は、これまでテレビの再放送やDVD化されるたびに支払われてきた印税が、ネットフィリックスやアマゾンなどの動画配信ビジネスの台頭によって激減しているので、報酬の支払いに新たなルール作りを求めているのがひとつ。

もうひとつは、生成AIに仕事を奪われないための保証だ。

「俳優が生成AIに仕事を奪われる」と言っても、ピンと来ないかもしれない。生成AIの急速な発達で、いまや亡くなった俳優をそっくりな姿や声を、スクリーンに再生することができるのだ。

わかりやすい所では「ディープフェイク」と言われる顔合成AI技術を使って、政治家や有名人のフェイク動画を作って拡散するなどが、すでに行われている。

ディープフェイクは、顔の合成のみだが、いまや人間の外見をスキャンするだけで、全身の姿を再現できてしまうのだ。姿だけではない、音声もその人の声のデータがあれば再現できてしまう。

この技術はもう映画などでは使われていて、いま上映中の映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』の中で80歳のハリソン・フォードは、生成AIの技術で37歳の若さになったハリソン・フォードが、約25分間も出演している。

ジェームズ・アール・ジョーンズは、『スターウオーズ』シリーズのダースベイダーの声を45年も演じてきたが引退し、後任は生成AIによってジョーンズの声を合成したものを使用することになった。

このように生成AIは着々と映画に活用されているのだが、アメリカの俳優たちは何を主張しているのか?

俳優組合の俳優たちのほとんどは、バックグランド(エキストラ)と呼ばれる下っ端俳優たちだ。いまそんな俳優たちに、1回10万円のギャラで外見をスキャンして提供するだけの仕事が出てきた。

もし1度スキャンされると、自分が知らない間に、自分の容姿の「AI俳優」が知らない間に映画やテレビに出演し、自分が言ってもいないセリフをしゃべる可能性があるのだ。またスキャンされたデータは、いろいろな映画に使われるおそれもある。

そこに映っているのは、すでに俳優である自分ではなくただのデジタルデータに過ぎなくなる。

また生成AI俳優が跋扈してくると、映画やテレビに生きた人間の俳優はいらなくなってくるのではないかという心配も出てくる。

映画監督にしても、自分が求める完璧なルックスと演技を、文句を言わず演じてくれるのだから、生きた人間を使うよりいいという人も出てくるだろう。

生成AIと言えば、集英社が5月29日に、生成AIで作成したグラビアアイドルの写真集が発売され、いろいろな批判があって10日ほどで発売中止になるということがあった。

そう遠くない未来、映画やテレビのスターは人間ではなく、AI俳優ばかりになるかもしれない。

例え人間であっても、AIによって美顔補正された60代の俳優たちが20代を演じているかもしれない。映画や演劇はそんなものだと言えばそうなのだが・・・

プロフィール

巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。

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