開口一番、日本ハム・新庄剛志監督から出た言葉を信じるしかない。しかし、これ以上、話し合っても結論は変わらないのではないだろうか。
日本ハムファイターズの首脳陣が千葉・鎌ケ谷の二軍施設に集まった。表向きの理由は今秋のドラフト会議に向けての「スカウト会議」だが、“主題”は違った。ソフトバンクへフリーエージェント移籍した近藤健介外野手の人的補償選手を誰にするのか、その最終チェックが行われた。
「基本的にはピッチャーでと考えている」
稲葉篤紀ゼネラルマネジャーがそう言う。新庄監督も「投手補強」を狙っているようだ。
「『この選手、出すの?』っていうのがピッチャー3人、野手1人いた。(日本ハムの)野手はけっこう整っているし。やっぱり、ピッチャーかな」
対象が絞り込まれたのは本当だが、前日も似たようなことを話していた。“前進ナシ”ということか…。
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しかし、新庄監督は「ピッチャーかな」と言った後、こんなことも口にしていた。
「最初の文字が『た』かな?」
「た」から始まるソフトバンク投手? 武田翔太、田中正義、高橋礼、高橋純平…。選手層の厚いソフトバンクが28人までと制限されたプロテクト名簿では、実績のある投手や潜在能力の高い中堅、若手をガードし切れないのは当然だろう。
とは言え、日本ハムが結論を先送りした理由はより好みをしているからではない。
「球のスピードは彼なんだけど。迷いましたよ。ビデオはもう擦り切れた。大学時代から見たから。その大学時代に復活できるのかどうかっていう見極めもね。そこはもう、うちのコーチの指導で」
これだけ特徴を挙げ、「た」から始まるソフトバンクの大学卒投手となれば、田中しか思い浮かばないが?
「田中は即戦力、いや、いきなりエース級の活躍を見せてくれるんじゃないかと期待されてプロ入りしました。でも、プロ1年目のキャンプでいきなり右肩の違和感を訴えて、その後も肩やヒジの故障を繰り返し、本来の力を発揮できず、今日まで来てしまいました」(プロ野球解説者)
2022年シーズンも右肩痛で大きく出遅れ、一軍登板は5試合のみだ。
潜在能力ならナンバー1、しかし、故障を繰り返してきた経歴を見ると、決断できなくなる。日本ハムが迷う理由も分かってきた。
前出のプロ野球解説者がFA移籍の舞台裏を教えてくれた。
「人的補償で移籍する選手なんですが、球団が発表した日に相手球団からの連絡が入ったわけではありません。一週間くらい前に連絡があって、当該選手に気持ちの整理をさせる時間を設けてから、メディア発表されています」
人的補償の対象チームであるソフトバンクに限らず、選手たちは自主トレを始めている。2月キャンプのことも考えれば、当該選手は移籍後の家探しでも苦労させられそうだ。
日本ハムはFAで選手を何度か喪失したが、2004年の北海道移転後、相手球団に人的補償を求めたのは1回だけ。“人選”が苦手なのかもしれない。早く、ファイナルアンサーを。(スポーツライター・飯山満)