「オレゴンの渦」は、地質学者、物理学者にして鉱山技師でもあるジョン・リトスター氏が1920年までに研究し、1930年に一般に公開された。
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この地域は、白人の入植と開発が行われるまでの長い間、現地のネイティブアメリカンの人々が「禁断の地」として忌み嫌っていた場所だった。この場所ではボールや水が坂道を転がり、場所によっては物体が大きく見えたり小さく見えたりするような、物理学の基本的な法則を無視しているとしか思えない現象が数多く報告された。
また、昔から「馬もこの場所を避ける」と言い伝えられてきたため、一度テレビ番組が実験を試みたところ、本当に馬が「オレゴンの渦」現象が確認できる一帯に入ることを嫌がった。このことから言い伝えが正しかったことが明らかになっている。
さて、この場所には一つの象徴的な木造の小屋が建っている。一見普通の小屋なのだが、なぜか大きく傾き地面に引きずり込まれるような見た目になっている。小屋の中では床や壁が傾いているにもかかわらず、ほうきが斜めに傾いた状態で静かに立っているのだ。
この家はもともと1904年に鉱山会社オールド・グレイ・イーグル・マイニング・カンパニーのオフィスとして建てられたものだ。同社は1911年にこの地域での金の採掘を中止したが、1914年にリトスター氏が倒壊寸前のこの家を発見。家とその周囲で発生している異常な状況に気づいてこの家に移り住むことを決め、独自に「渦」の研究をすることにした。
彼は1959年に亡くなるまでの数年間、この地で何千回と実験を繰り返したものの、謎は解けなかった。リトスター氏はこの地を取り囲む目に見えない球体が、説明のつかない力の「渦」を生み出していると考えており、渦の起源については「ゆがんだ原子、電磁石、さらには先史時代の宇宙人が残した地下の超巨大機械」など、様々な説を提唱したものの、立証できずに終わっている。
現代も多くの人が「オレゴンの渦」の解明に取り組んでいる。地磁気や磁場によるものとみられているが、原理はいまだに解明されていない。一方でこの地で発生している奇妙な現象の数々は、単に「目の錯覚」の産物にすぎないという指摘も存在している。
数学者のフィリップ・ギブス氏は次のように語る。
「私たちが坂を上っていると感じるのは、複数の要因が関係しています。内耳にある平衡感覚もその一つですが、視覚的な手がかりも重要な部分を占めており、時に視覚情報が平衡感覚を上回ることもあります。水平線が見えない、あるいは自分の立っている場所が本当は水平な土地でない場合、私たちは地面から垂直に立っているように見えたものが実は斜めだった、という事実を受け入れにくくなります。また、誤った遠近感も重要です。並んだ木が距離によって大きくなったり小さくなったりすると、遠近感が狂ってしまう。遠くの物体が実際の大きさよりも小さく見えたり大きく見えたりするのです」
これらの要因が狭い範囲で同時多発的に起こってしまっているのが「オレゴンの渦」だったのではないか、というのだ。
なお、現在この場所の一帯は自然公園に指定されており、一般の観光客も訪れることができる。伝説の「禁断の地」は、今では立派な観光資源なのだ。
山口敏太郎
作家、ライター。著書に「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」、テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。
YouTubeにてオカルト番組「アトラスラジオ」放送中
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'Vortex' house on 'forbidden ground' where 'balls roll uphill and people get taller'(The Daily Star)より
https://www.dailystar.co.uk/news/weird-news/vortex-house-forbidden-ground-balls-28080598