研究者のヨハン・ガウム氏とアレキサンダー・プズリン氏の2人は昨年、1959年に発生した謎に満ちた遭難事件・ディアトロフ峠事件の原因がスラブ雪崩である可能性を科学モデルを使って示し、世界的な話題となった。
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ディアトロフ峠事件の概要はこうだ。1959年1月27日、当時のソ連領スペルドロフスク州北部のオトルテン山に向けて当時23歳のイーゴリ・ディアトロフら、9人の大学生がスキーのために入山したが、予定の日になっても下山してこなかった。2月に入って軍と警察が大規模な捜索をしたところ、半壊した彼らのテントと行方不明になった大学生のうち5人を発見。残る4人は5月の捜索で発見されたが、彼らの状況は遭難と言うには非常に不可解なものであった。
テントは内側から切り裂かれており、彼らは雪深い山の中へ着の身着のままで飛び出していたことが判明。何者かによって殺害されたような状況になっており、頭部や肋骨が折れているとみられる者や、眼球や舌が切り取られていた者など、どの遺体もひどく損壊していた。また、衣服からは高濃度の放射線が検出されたという。彼らは2月頭までは生存していたようで、日記や写真が残されていたのだが、カメラのフィルムには謎の発光体が捉えられていた。
不可解な点の多い遭難事件であるが、現在では死体の損壊について、雪山とはいえ発見が遅れたために腐敗し、野生動物に食べられたのではないかと考えられている。しかし、彼らがなぜテントを捨てざるを得ない状況になったのかは謎のままだった。この謎に挑んだ2人は過去1年間で3回ディアトロフ峠を訪れ、前述の科学モデルを用いた自分たちの仮説が、かなり有効であることを示唆する兆候を発見したと論文にはある。
彼らは自分たちの研究に対する反応は「圧倒的」であり、ロシア以外のメディアからは概ね好意的に受け止められていると説明しているが、事件現場であるロシア国内では懐疑的な意見が多かった。
特に注目されたのは、ディアトロフ峠は「雪崩の危険性がきわめて低い」という意見だ。そこでガウム氏とプズリン氏は、その意見を払しょくするために実際にガイドを雇って事件現場まで行き、現地の状況を調査を行った。そして、3回目の調査で自分たちの説を裏付けるような、説得力のある証拠を発見したのである。
2022年1月28日、ディアトロフ一行の最後の生還からちょうど63年目にあたるこの日に二人の研究者とガイドスタッフは、ディアトロフ事件で遭難した学生たちの旅を再現してみたという。現地に向かう途中、本当に「当初は良好だった天候が急速に悪化し、風や気温が1959年の悲劇の夜と同じようになった」と彼らは述べる。
その後視界が極端に悪くなり、ハイカーたちがキャンプを張った場所から1キロも離れていない場所で「2つの雪崩の跡」が確認された。しかし雪崩の痕跡は天候の変化ですぐに消えてしまい、雪崩の痕跡は1時間足らずで見えなくなったという。
「この事実を踏まえると、遭難発生から3週間後に現場に到着した救助隊が雪崩の痕跡を見つけられなかったのも不思議ではない」と研究者は驚嘆している。これらの現地で得られた観察結果から、両氏はこの場所は雪崩が起きにくいという説を覆すことができたと自信を見せている。
論文の最後に、研究者たちはディアトロフ峠事件という奇妙な未解決事件を調査することの中毒性についてかなり興味深い見解を披露している。2021年に初めて研究成果を発表したとき、2人はもう事件の調査が終わったと考えたそうだ。ディアトロフ峠事件の謎以外にも研究対象は数多くあるからだ。
しかし2人は「1年たつと自分たちの学説にもう確信が持てなくなった」と、予想もしなかった形でこの物語が自分たちの中に定着したことを示唆した。「今後も事件について誰かに尋ねられたとしても、断定は控えるつもりです」と彼らは語っている。
謎多き未解決事件のディアトロフ峠事件そのものが、人を引き付ける何らかの魅力を持っているのだろうか。
山口敏太郎
作家、ライター。著書に「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」、テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。
YouTubeにてオカルト番組「アトラスラジオ」放送中
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