これは松山遠征の初戦を快勝した直後に囁かれていたものだが、首位阪神を追撃する一番手が「巨人からヤクルトに入れ替わるのではないか?」なる予想が多く聞かれた。
その時点で、首位阪神と2位巨人のゲーム差は「2」。巨人と3位ヤクルトのゲーム差は僅か「0・5」、8月18日の直接対決で順位が入れ替わるところまで迫っていた。
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「ヤクルトを警戒する声が強くなったのは、巨人とのゲーム差が縮まったからではありません。オリピックブレイクの間、各チームは前半戦のデータを整理しました。『5月以降のチーム成績』という見方をすると、セ・リーグの順位は、1位ヤクルト、2位巨人、3位阪神となります」(在京球団スタッフ)
改めて調べてみたが、その通りだった。
ヤクルトは28勝22敗5分、巨人は27勝22敗6分。阪神はヤクルト同じ28勝を挙げているが、24敗(3分)を喫しており、「勝率」に直すと2位巨人よりも下となる(前半戦終了時点)。ペナントレースが始まる前、ヤクルトを上位に予想する声はほとんどなかったはずだ。
「元々、打線の良いチームでした。村上宗隆がいて、オスナ、サンタナの両外国人選手も好調です。山田哲人が安定した成績を残しており、青木宣親も健在です」(前出・同)
「投手陣が整えば…」というのが、低く評価されていた理由だろう。
また、「5月以降」なるデータが重要視される理由を、前出の在京球団スタッフがこう説明する。
「新型コロナウイルスですよ。外国人選手の来日が大幅に遅れたチームも多く、ヤクルトもその影響で開幕序盤は苦しんでいました。ベストメンバーが組めるようになったのは、5月以降だからです」
2位浮上をかけて臨んだ8月19日の巨人戦、敗れはしたものの、ヤクルトの強さを再認識させられた。
9回裏最後の攻撃だった。1点ビハインド、巨人・原辰徳監督は守護神・ビエイラをマウンドに送った。先頭の中村悠平が粘って四球を選ぶと、ヤクルトベンチが活気づき、次打者はしっかりと送りバントを決めた。「あと1本」が出なかったが、中村の代走・渡邉大樹はリードを大きく取り、偽装スタートを切るなどし、巨人バッテリーにプレッシャーを与え続けていた。高津臣吾監督の執念、勝利への執着心が感じられた。
弱点だった投手陣について、こんな指摘も聞かれた。
「2年目の奥川恭伸の台頭、トレードで途中加入した田口麗斗によって、先発投手陣の人材難が埋まりました。田口のトレード加入が、やはり大きかった」(プロ野球解説者)
巨人が連覇に失敗するようなことになったら、田口放出も敗因として挙げられそうだ。(スポーツライター・飯山満)