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五輪不適切演出問題、会議室でのアイデアなら炎上しなかった? 文字コミュニケーションの難しさと適応できない世代

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 東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式で演出の統括役を務めていたクリエイティブディレクター・佐々木宏氏が、開会式での演出としてタレントの渡辺直美を豚に見立てたプランを提案していたことが17日、ニュースサイト『文春オンライン』によって報じられた。

 記事では、東京オリンピック開会式の演出を企画するチームメンバーによる10人以上のグループLINEに、同プランが投稿された際のスクリーンショット画像も公開された。そこには「(豚の絵文字)=渡辺直美への変身部分。どう可愛く見せるか」「オリンピッグ(豚の鼻の絵文字)」などとあり、グループLINE参加者はすぐに「容姿のことをその様に例えるのが気分よくないです」「⼀時的なアイデアだとしても、言うべきじゃない」など、不快感を示すとともに不適切な内容であることを指摘し、提案はボツとなっていた。この報道以降、批判が殺到した佐々木氏は、18日に辞任を表明した。

 なぜこのような事態になったのか。その答えとして、提案の内容に問題があったことはもちろん、メンバーしか見られないはずのLINE画面がなぜか流出したこともあるが、対面の会議でなくグループLINE上でアイデア出しのミーティングが行われていたという点も原因の一つと言えるだろう。

 それというのも、人間のコミュニケーションの種類には、言葉や文字による「言語的コミュニケーション」と、表情や話し方、声のトーン、ジェスチャーや態度などによる「非言語的コミュニケーション」の2種類があり、非言語的コミュニケーションによって読み取れる情報の割合は65%を超えると言われている。つまり、同じように意見交換をしているようでも、文面のみのやりとりでは伝えられる情報量が少なく、送り手と受け手との間でズレや温度差が生じやすいのだ。

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 例えば、もし今回の問題の発言が対面会議によって口頭で行われていたなら、問題となった発言は軽く流されていた可能性もある。あるいは、提案した本人が相手の表情や反応から察してその場で撤回したり、一瞬凍りついた雰囲気も、取りつくろって和ませるということもできる。さらに、それをさりげなくフォローしてくれる者もいたかもしれない。

 ただ、文字のみによるやりとりの中では、受け手側の否定的なリアクションがダイレクトに反映され、辛らつなものに感じやすく、さらにその反応が複数であれば、全体的な雰囲気の悪さが出てしまう。さらに報じられたのは映像や音声でなくネットニュースや誌面である。読み手にどういうニュアンスなのか伝わらない上に、メンバーたちの嫌悪感もより怒り度合いが強い状態で伝わってしまう。真意がどうだったかは関係なく最悪の状態で伝わり、集中砲火を浴びる事態にまで発展してしまった。

 こうしたSNS上の発言のトラブルは、ネットの利用経験が多いほど回避しやすいと言える。文字のみでのやりとりによるリスクや暗黙のマナーをわきまえているからだ。デジタルネイティブ世代は、SNS上でのやりとりにおいて、相手がどう受け取るのかを想像しつつ、文面が与える印象をコントロールしたり、客観性を意識して書くという習慣が自然と身についているだろう。さらに、発言が第三者の目に入る可能性なども踏まえ、トラブルのリスクまで考慮できているのかもしれない。

 一方、ネットが普及していない時代のコミュニケーションも経験した世代の人にとっては、少なからずネット上のコミュニケーションに難しさや違和感を覚えるはずだ。チャットやSNSは簡単に意思表示ができる便利なツールである一方、安易な発言が大きな痛手となってしまうこともある。今回はその一例になったと言えるだろう。

文:心理カウンセラー  吉田明日香

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