政府の方針に振り回された旅行会社は、落胆の色を隠せない。
「顧客の多くが東京在住者だったことから、国内ツアーやホテル、旅館のキャンセルが殺到し、7月〜9月の予約はほとんど白紙になりました。このままでは旅行会社はやっていけませんよ」(大手旅行代理店関係者)
さらに、Go To事業を利用しない旅行客まで予約キャンセルが急増しており、観光業界の中でも特にホテル、旅館など宿泊業者が大打撃を受けている。
街中にあふれていた外国人観光客は姿を消し、観光地は閑散としている。日本政府観光局によると、今年6月の訪日外国人客数は、前年同月比99.9%減まで落ち込み、9カ月連続で前年同月を下回っている。
こうした状況を受けて、宿泊業者の倒産が急増。帝国データバンクによると、今年1月〜6月で旅館、ホテル、簡易宿所の倒産が80件発生しており、すでに前年(72件)を上回るペースで推移している。倒産した80件のうち、半数近くが新型コロナ関連だという。
「東京五輪に合わせて増設を進めていたのですが、新型コロナで大損失ですよ。建物が完成しても、この状況ではオープンするわけにもいかず、泣く泣く開業を延期しました」(大手ホテル関係者)
既存のホテルも、稼働率は1〜2割程度まで落ち込んでいる。
「これまでインバウンド特需で人手不足が続いていた宿泊業界だが、今や新型コロナで仕事が激減し、リストラに必死です」(経営コンサルタント)
世論の反対を押し切ってまで政府がGo To事業をゴリ押ししたのは、政治家の利権絡みという憶測も広がっている。
この“世紀の愚策”が宿泊業界の倒産ラッシュに拍車を掛けることになれば、安倍政権への一層の批判は避けられない。