「全然援護してあげられなかった。だから…」
これは、同日先発の上沢が左膝骨折からの復活勝利を目指すものの、過去2試合、勝てなかったことを指している。チームメイトを思いやる言葉が自然と出るかどうか、それが中田の好不調を表すバロメーターでもあるようだ。
中田は「ヤンチャ」、野球小僧がそのままオトナになったようなイメージだが、繊細な一面も秘めている。打撃不振に陥ると長引くのがその一例で、色々なこと、それもマイナスなことばかりを考えてしまうのだ。
そういう時の中田は周囲が見えなくなる。かつて、栗山英樹監督が打撃不振から抜け出すための荒療治で「1番」の打順に置いたこともあった。中田は「1番バッターのタイプではない」とぶんむくれたが、「1打席でも多く」の栗山監督の親心は分かっていたはず。思っていたことを素直に表現できなくなるのか、不振を思い詰めて周りが見えなくなってしまう“弱さ”も窺えた。
さらに遡れば、こんなエピソードもあった。
「新人時代、借りてきた猫のように大人しくなっていました。聞いたら、『ノックで誰もエラーしないから』と緊張している理由を話していました」(ベテラン記者)
レギュラー選手の平均年齢が若い日本ハムにおいて、中田はベテランの域に達した。11号先制アーチを放った後、一部後輩たちがちゃかしたような出迎えをした。その時の中田は妙に嬉しそうな表情を返していた。
「後輩たちを連れて食事に出掛けたりもしています。最近は新型コロナウイルスの影響で控えているようですが、面倒見の良い先輩です」(前出・同)
チームは目下、5位。チーム打率2割2分4厘は12球団ワーストだが、防御率はリーグ2位と奮闘している。「中田が決める」、彼の前に走者を溜めるという意識がさらに高まれば、上位浮上は難しくないのだが…。
「今季はカード初戦を落とすことが多々あります。エースの有原が1勝4敗、上沢がようやく勝ったという状態です。カード初戦に先発するピッチャーは『エース対決』になるので、打線で援護していこうとしています。チームの明暗は中田次第と言えそうです」(プロ野球解説者)
自身の打撃の好不調に関係なく、チームを牽引できるリーダーもいる。しかし、流されやすい中田の弱さも魅力的に思える。中田自身も真のリーダーに成長するための課題は多いが、勝敗の行方は中田次第という現状だ。今後、栗山監督は中田を奮起させる環境をさらに整えていくはずだ。(スポーツライター・飯山満)