問題の箱は「ディビューク(Dybbuk)の箱」と呼ばれているもので、アメリカの超常現象研究家であるザック・バガンズ氏が所有しており、氏の所有するいわくつきの物を多く展示している「ホーンテッド・ミュージアム」(ネバダ州ラスベガス)にて展示されている。
箱は木製で、観音開きの小型のワインセラーとなっており、元は移民としてアメリカにやってきたユダヤ教徒のポーランド人女性の持ち物だったと言われている。彼女はアメリカに渡る前に、スペインで「降霊術で召喚された悪魔が封印されている」というこの箱を購入。彼女は悪魔の存在を信じていたのか、開封せずに大切に保管していたそうで、亡くなる前にも「この箱は絶対に開けないで、私が死んだら一緒にお墓に入れて」と遺言を残していたそうだ。しかし、ユダヤ教の慣習では一緒に埋葬出来なかったため、遺品整理の際に売り払われてしまった。
だが、その後購入した人々の身に次々と異変が起き、本当に悪魔が封じられていたのかと話題になってしまったのである。初めに購入したのは近所の骨董収集家で、購入直後に開けて中を確認した。だが、その行為がいけなかったのか、購入したその日から心霊現象や体調不良が自分の周囲で相次ぎ、遺族に返却を申し出たものの断られたため、ネットオークションに出品した。
次に、購入した大学生の元では、手にした途端に家電が火を放つ、部屋から悪臭や害虫が出てくるなどの異変が勃発。彼も早々に大手オークション・サイトのeBayに自分のエピソードを添えて出品したところ、これまでにないアクセス数を叩き出すほどの評判になってしまった。
それから、医療関係の博物館館長の手元に渡ったが、そこでも異変が勃発。彼は最初の持ち主と同じユダヤ教の宗教指導者であるラビに相談し、悪霊を再度封印してもらったという。騒動は収まったようだが、手元に置いておきたくなかったのか、前述の超常現象研究家であるザック・バガンズ氏の元へ寄贈、以降は彼の博物館で展示され続けている。
気になる中身は、1920年代のペニー硬貨2枚、2つのブロンドの髪の束、御影石の石片、乾燥したバラと小麦、燭台と小さなゴブレット。そしてヘブライ語でシャローム(shalom)と赤い文字が刻まれた小さな石片だったという。
博物館では、ガラスケースの中に鎮座しており、さすがに現在は封が開けられる事はないようだ。
(山口敏太郎)