原巨人が水野雄仁巡回投手コーチと高田誠ファームディレクターのスカウト兼務を決めた。スカウト部長職にいた長谷川国利氏が編成本部付部長に異動となったため、実際に球児を視察するスカウトマンの人材不足を補うためだ。
「二、三軍選手を実際に指導しているコーチが、アマチュア選手を視察するスタイルとなりました。ドラフト対象選手の力量を確認するには最適」(プロ野球解説者)
こうした人事にも、原辰徳監督の意向が反映されているという。今回の人事で、原監督が期待しているのは、「兼務」「兼任」がもたらす相乗効果だ。
「専任によるプレッシャーが、今春のキャンプ後半から言われるようになったので」(前出・同)
今季、原監督が期待していた若手の一人が大城卓三だった。背番号46から24に昇格したところからも分かるが、首脳陣は彼の打撃力を買い、捕手から一塁手に専念させようとしていた。
「昨季も大城をキャッチャーからコンバートさせる話は出ていたんです。ゲレーロ(退団)がダメだったら、大城を外野手にコンバートして使おうみたいな」(球界関係者)
だが、大城は期待の大きさに重圧を感じ、対外試合での成績もイマイチ。「高橋由伸前監督の背番号を継承した重圧」とも報じられたが、「一塁手専任=高打率」の意識に自滅してしまったのが真相だ。原監督や首脳陣が「捕手兼一塁手」に戻し、本来のバッティングを取り戻したわけだが、こんな指摘も聞かれた。
「一塁には中島、北村、外野手兼任の山下と陽がいて、捕手には小林、炭谷、岸田がいます。大城の打撃力は対戦チームも認めているので、いずれは一塁手専任にした方がいい」(前出・プロ野球解説者)
「兼任」になることで、出場機会の増えるとは限らないのだ。この辺に関しては大城自身が乗り越えていく課題だが、今回の水野、高田両コーチの兼任には“別の期待”も寄せられていた。
「アマチュア球界、特に高校球界の練習メニューをプロ側が勉強しなければならない時期になりました。個性的な練習をする高校も多く、それは高校指導者が柔軟な発想を持っているからです。シートノックにしても、学校ごとに異なり、オーソドックスな昔ながらのやり方を続けているのはプロだけ。だから、新人選手がプロ入り後、戸惑う場面も見受けられます。新人育成のプログラムを広げるためにも、プロのコーチがアマチュアの練習を見るのは有意義な結果につながります」(前出・球界関係者)
ドラフト1位ルーキーの堀田慎賢投手が右肘の故障でメスを入れることになった。プロ入りしていきなりの手術であり、目立った故障歴もなかった1位指名投手の離脱は、首脳陣に少なからずショックを与えた。
高校卒投手をいきなり故障させないためにも、これからは、体力、関節の疲労度を“スカウト兼任コーチ”が見抜いていかなければならない。(スポーツライター・飯山満)