サイバーエージェントには、すでにDDTというプロレス団体がグループ入りしていて、今後はDDTの高木三四郎社長がノアの代表も兼任するという。いま、日本のプロレス界は、新日本プロレスが一強という情勢だけど、そこに高木くんとサイバーエージェントの連合軍が挑むという状況になってきたね。
何はともあれ、サイバーエージェントのような業績が伸びているIT系の企業がプロレス界に投資してくれるのはいいことだよ。新日本プロレスの親会社のブシロードもそうだけど、このあたりの新興企業の社長さんたちは、世代的にプロレスに対する愛着が強いんだと思う。単なるビジネスじゃなくて、プロレス界を盛り上げたいという気持ちがあるから、ありがたいよ。
ただ、サイバーエージェントは、AbemaTVというインターネットの動画配信サイトをやっていて、ここがテレビ朝日と組んでいる。そして、テレビ朝日は、新日本プロレスと昔から強固な関係にある。だから、AbemaTVという媒体が、各プロレス団体から見ると振り子状態になってて、関係は複雑になっている。
とはいえ、新日本プロレスとテレビ朝日は、旗揚げ時から一心同体で、ずっと離れずにやってきた。それに、新日本プロレスの映像権利を持っているのはテレビ朝日だ。
★スターを生むのに必要な“現場の人材”が少ない
今は若者を中心にスマホで動画を見る時代になっていて、今後は俺ら世代でもそれが当たり前になると思う。だから、過去の映像っていうのは、宝の山なんだよ。猪木さん、タイガーマスク、長州(力)さん、藤波(辰爾)さん、闘魂三銃士の映像は、どんどん価値が上がっていく。もちろん、新たにモノを作っていく時に、こうした映像があるとないのとでは大違いになる。だから、新日本プロレスとテレビ朝日は、もう離れられないだろうね。
ただ、プロレス団体に絶対に必要なのは、スター選手を生み出すこと。つまり、一流の選手を育てないといけないんだけど、その生成工場は、プロレスだと“道場”になる。
WWEも新日本プロレスも頑張ってるけど、ここ最近はスターが生まれていないから、手っ取り早く他の選手を引き抜いちゃう。それで一瞬は業績アップするかもしれないけど、長い目でみたら道場からスター選手を育てないといけない。
多分、今は道場で優秀なレスラーを育てる手腕のある人間が少ないから、どの団体も苦しんでいるんだと思う。母体が大きくなっても、最後は人。現場の人材を大事にしてほしいね。
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1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。