魚種が減る冬場にもそういった釣りがあり、その代表例が“夜ガレイ”。読んで字のごとく日没後にカレイを狙う釣りで、産卵に適した時期と場所限定で夜に釣れ盛る傾向があります。
普段、日中に陸から楽しむカレイ釣りは、数尾釣れれば御の字ですが、この時期の夜ガレイは短時間にバタバタと釣れ、ときには2ケタに達することもしばしば。
そんな釣りゆえ、「釣れ始めた!」という情報が出回った場所は、たちまち大混雑。もちろん、過去の実績場には、時期になると様子見に竿を出す釣り人も多く、寒い夜の海辺が俄に熱気を帯びるのであります。
ちなみに、このタイミングで釣れるのはことごとくオスばかりで、みな一様に白子を垂らしながら上がってきます。元々、カレイ釣りは大好きですが、この時期はなんとも言えぬ親近感があるんですな。まぁ、ワタクシなんて年中独りで白子を垂らしていますから…。
ということで向かったのは、東京都江東区の「豊洲ぐるり公園」。完成から日が浅いこともあって実績は不明ですが、以前から目星を付けていた場所です。実績場で確実に結果を出すのも楽しいですが、新たな可能性を試すほうが個人的にはゾクゾクするというか…。
例えれば、職場で気になるあのコのジャーブラの中に隠れているビーチクの色を想像するゾクゾク感、といえば分かりやすいでしょうか。あ、想像しただけで白子が…。
★最後の最後に激ウマ外道が!
仕事を終え、すっかり日が暮れた頃に釣り場に到着。園内にはスズキ狙いと思しきルアーマンがちらほらいる程度で、広い護岸はガラガラです。
「このクソ寒い夜に、実績もない場所で竿を並べてカレイのアタリをジッと待つ人もおらんやろな」
持参したカレイ用の仕掛けにエサのアオイソメをたっぷり付け、まさに東京港といったムードの海へ投げ込みます。
それにしても、ココは眼前に広がる夜景が見事ですなぁ。正面に架かるレインボーブリッジ、きらびやかに輝く高層ビル群の間からは東京タワーが頭を出しており、長時間見ていてもまったく飽きません。
と、竿先に付けた発光体が激しく揺れました。急いで仕掛けを巻き上げると、明らかにカレイではない走りと派手なエラ洗い(ジャンプ)が続きます。この界隈では主役ともいえる50センチほどのスズキでした。
周りのルアーマンはこれを狙っているのですが、カレイを狙うワタクシとしてはちょっとガッカリ…。
気を取り直して再び仕掛けを投げ入れますが、その後も掛かるのは30センチほどのスズキばかり…。結局、3時間ほど竿を出し「まあ、あくまで初手やし、トライしたことに価値アリ」と、竿を畳むことにしました。
順に仕掛けを回収し、いよいよ最後の竿を手にすると、クンクンッと微妙な手応えに続いて重量感が伝わりました。アタリなし、適度な重量、地味な手応え…これはカレイな雰囲気が濃厚ですよぉ。
「最後に、やっちまったか!?」
胸の高鳴りを感じながら巻き上げてくると、ライトで照らされた水面に銀白色の魚が…。またスズキか…。しかし、抜き上げてみると30センチほどのシログチでした。
コイツも結局、外道ですが、密かに激ウマな魚なのですぐに血抜きをしてキープ。本命は釣れずとも、よい酒の肴が手に入り、足取りも軽く帰路に就きました。
★貴重な白身は炙ってウマ〜
このシログチという魚、主に練り物製品の原料とされており、刺身のような生食で供されることはほとんどありません。というのも、「練り製品の原料=安値」というイメージが強いこともあって、生食に適した個体がなかなか入荷しないという事情があります。つまり、よい状態のシログチを生食で楽しめるのは、釣り人の特権ともいえるんですな。
ということで、今回は焼霜造り(炙り)を拵えて晩酌の肴としました。東京港奥産ながら白身らしい旨味が非常に濃く、皮目の香ばしさと脂の甘味も強く感じられて非常に旨い!
『多満自慢 淡麗純米大吟醸』の酸味あるスッキリした飲み口も、シログチの旨さをさらに際立たせる味わいで、相性バッチリです。
「あらたなる夜ガレイ場を発見!」とはいきませんでしたが、思いがけず旨い肴にありつけて、満足な晩酌となりました。
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。