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特選映画情報『子どもたちをよろしく』〜イジメ被害者&加害者家族の双方の闇と相克!

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提供:週刊実話

配給/太秦 渋谷ユーロスペースほかにて公開
監督/隅田靖
出演/鎌滝えり、杉田雷麟、椿三期、川瀬陽太、村上淳、有森也実ほか

 企画の前川喜平、企画・統括プロデューサーの寺脇研は、ともに元文部科学省であり、近年メディア露出も多いので、顔と名前が一致する方も多いだろう。この“反骨の官僚”2人がタッグを組んで製作に関与したのが、この社会派問題作。これまで日本の子どもたちの問題に取り組んできた両人の祈りにも似た願いが、この題名に込められている。いじめ問題とともに、風俗産業に身を沈める若い女性の姿を描いているのも見逃せない。

 北関東のある街。密かにデリヘルで働く優樹菜(鎌滝えり)は、実の母・妙子(有森也実)、義父・辰郎(村上淳)、辰郎の連れ子・稔(杉田雷麟)との4人暮らし。辰郎は酒に酔うと暴力を振るい、優樹菜には性暴力を繰り返してきた。そんな優樹菜の働くデリヘルの送迎運転手をする貞夫(川瀬陽太)はギャンブル依存症で、息子の洋一(椿三期)をほったらかし。稔と洋一は中学の同級生だが、いつしか洋一への陰湿ないじめに稔も加わることとなる…。

 深刻ないじめ問題の被害者家族、加害者家族双方の闇をシンクロさせて描いているのが効果的で、結局、ツケは子どもたちが払わされる現状を憂い、嘆いている。何とも皮肉なのは、加害者家族の姉が働く風俗の送迎運転手を被害者家族の父親が務めていることの偶然を、当初は知らないということ。川瀬は、ピンク映画から一般作まで幅広く出演する個性派バイプレイヤーで、昨年の『JKエレジー』でも、北関東のバクチ好きのダメ父を演じていた。こういう役をやらせるともう天下一品で、作品に説得力を増す。“川瀬効果”とでも言うべきか。

 一方、デリヘル嬢に扮した新星・鎌滝えりの熱演は特筆ものだ。“完脱ぎ”はないものの、その“お仕事シーン”もしっかり描かれる。一見、自棄的に映るが、地に足付けてこの仕事をしている意識も感じられる。そして、運転手を小ばかにして、ふてくされるサマも、いかにもいそうな感じで演じている。素顔の彼女は学生時代、不登校の時期があったそうで、そういう自分のリアルを感じながら演じたのであろう。

 ただ1点、気になったのは、最も自立度が高いはずの彼女が東京に出て行く折に、なぜ単身ではないのか。義理の弟と一緒ならまだしも…と疑問に思うこと大。前出『JKエレジー』のヒロインは単身で故郷・家族を捨てたのに。とはいえ、格差社会が広がり、貧困率が増加する現代に一石を投じた問題作であることに変わりはない。
 《映画評論家・秋本鉄次

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