毎年、東京都赤十字センターの要請で行われている力士たちの献血が2月12日、東京の両国国技館で行われた。若く元気な力士たちが病気に苦しむ人たちの回復を手助けしたい、という思いが根底にあるからだ。
趣旨はまことに結構。さぞかし献血会場は横綱、大関らで大混雑し、熱気ムンムンかと思ったら、全く違った。現在、日本相撲協会に所属する力士たちは650人あまりいるが、やって来たのは6分の1弱の98人だけ。その中に白鵬、鶴竜の両横綱をはじめ、大関・貴景勝や初場所に幕尻優勝をやってのけた徳勝龍、さらには3月8日から始まる春場所で大関取りがかかる朝乃山らの姿はなかった。
「力士は脂肪肝など、内臓に疾患を抱えている人や、さまざまな薬の服用者も多いため、献血する前の問診の段階でハネられるのです。病気の人に与える血液は健康じゃないといけませんから」(担当記者)
このため、今年も十両以上の力士70人のうち、献血できたのは、幕内の玉鷲、霧馬山、十両の旭大星、矢後の4人だけ。幕内2人はいずれもモンゴル出身で、日本人力士は皆無だった。
玉鷲が合格する理由はよく分かる。初土俵から35歳になる今日までの16年間で、1日も休場したことがない筋金入りの健康人間なのだ。4年前の献血時も、あまりにも腕の筋肉が硬くて針が刺さらず、「来年、今年の分と2年分をやります」と諦めたこともある。今年も上限の400㏄を献血した玉鷲は、こう笑い飛ばした。
「これで8回目か、9回目。毎年、こうやって献血できるのを楽しみにしているんだ。14回も献血している若い衆がいるので、そこを目指したい」
去年の暮れ、先代東関(元幕内潮丸)が41歳の若さで亡くなった。幕内力士の平均寿命は約63歳で、一般男性より18年も短い。見た目は健康そうだけど、ホントは病人だらけなのだ。