直線の内から外まで目いっぱいに広がった馬群の中からグイッとひと伸び。首の上げ下げをハナ差制し、真っ先にゴールに飛び込んだのは8歳馬ダンスアジョイだった。
コスモプラチナとドリームフライトがハナを主張し合うなか、ゆったりとゲートを出たダンスは最後方。「もともとスタートは速い方じゃないから、のんびりと。持ち味(末脚)を生かすように乗ろうと心がけた」(角田騎手)。人気は下から数えて3番目。気楽な立場だったこともあり、道中は折り合いに専念した。
3コーナー過ぎ、前2頭が早々と脱落し始めると、ハンデ戦らしく直線は残る16頭がごった返す大混戦。ダンス=角田は迷いなくインにもぐり込む。前が開かなければジ・エンドのイチかバチかの賭けだったが、勝利の女神は彼らに味方した。ラスト1F、馬群がバラけたところで、ためにためていた脚を一気に爆発させた。
「イン? 狙ってましたよ(笑)。不利もなくスムーズな競馬ができたし、スタッフの方もうまく仕上げてくれた。何より、お世話になっている松永(幹)先生に恩返しができてよかった」と角田は振り返った。
ダンスとコンビを組むのは昨春の阪神戦以来。「写真判定に弱い馬だから…」。そのひと言に凝縮されるように、ダンスは良くも悪くも相手なりに走りすぎるタイプだった。重賞で善戦したかと思えば、条件戦で取りこぼす。しかも、近走は年齢的なものか、その安定感すら失っていた。そんななか、めぐってきた“旧友”との久々の再会。そこで得た勝利は角田にとって格別なものがあったに違いない。
一方、この日の勝利は松永幹調教師にとっても特別なものとなった。騎手時代を併せたJRA全10場での重賞制覇だ。
「小回りはどうかと思っていたけど、デキが良かったんで使ってみようと。勝った瞬間は思わずバンザイしちゃったよ(笑)」とトレーナー。「サマー2000シリーズもチャンスがありそうだし、この後は馬の体調を見ながら新潟記念を目指したいね」と意欲をのぞかせた。
それにしても、七夕賞を勝ったミヤビランベリ(6歳)といい、函館記念Vのサクラオリオン(7歳)といい優勝したのはいずれも高齢馬。今年のサマー2000シリーズはロートル軍団が席巻しそうなムードだ。