どこまでいっても亀田スタイルだけは変わらなかった。左手中指には巨大な金の指輪を輝かせ、大股開きで鎮座した史郎トレーナー。頭を丸め、ひと言も発しないまま途中退席し、反省の態度を前面に表した大毅とはあまりに対照的な姿だった。
史郎トレーナーはおよそ10分間の会見で顔を上げることなく、うつむきながら淡々と質疑に応答していたが、亀田流のパフォーマンス、スタイルの反省についての質問が飛ぶと表情は一変した。
史郎トレーナーは突然顔を上げると、報道陣に敵意むき出しの鋭い眼光を飛ばしながら「パフォーマンス?」と怒気を含んだ口調で聞き返した。さらには「スタイルはとりあえず、このままの自分らのスタイルなので。反則行為については指導していきます」と反則行為の伏線ともいえる亀田スタイルを今後も貫いていくことを明言した。
さらに11R前に反則を促す指示があったとされた裁定については「最後はポイントも取られているから、悔いのないように戦え、と。どうとらえるかはそちらの自由だが、オレらは言うてません」と疑惑を否定しつつ、開き直りとも受け取れる態度を見せた。
ボクシング関係者は「親父さんにとっては相当に屈辱的ではらわたが煮えくり返っているはず。ファンやボクシング関係者に迷惑を掛けたから、殊勝になっているわけではない。息子たちを助けたい一心。子供のことしか考えていない。裏を返せば悪いとは思っていない」と史郎トレーナーの“逆ギレ”の裏に、親バカぶりがあると指摘した。
親心があるにせよ、JBCの裁定に不満の色をのぞかせた史郎トレーナーとは対照的に、大毅はよほどショックが大きかったのか、自らの意思で金髪をバッサリ切り落として頭を丸めるなど厳しい処分が下されたことで反省している様子。コメントを促される場面もあったが、会見では終始怯えたような表情を浮かべ無言を貫いた。
そんな大毅について史郎トレーナーは「家でもああいう状態。自分で丸刈りにして、精いっぱいできる気持ちを示したと思う。しゃべれなくてもみんなの前に出て態度だけでも示そうという気持ちを、ちょっとでも分かってもらえたらということでやったと思う」と説明。わずか2分のスピード退席でJBC職員に抱えられ、足元もおぼつかない大毅は人形のように無表情のままだった。
あまりに対照的だった史郎トレーナーと大毅の態度。父子の間には微妙なすき間風が感じられる。前出の関係者は「大毅は一年間、試合できないつらさで大きなショックを受けているのは事実。ただ、親父さんの方は反省していないでしょうね」という見解を示した。
亀田3兄弟は無期限セコンドライセンス停止の処分を受けた史郎トレーナーの下を離れ、新たなトレーナーの下で再出発するが、父の親バカの加護から離れて大人へのステップを踏むことになる。心・技・体そろった真の世界王者を目指すため、今こそ親離れのときが訪れたようだ。