東京都立川市には広大な昭和記念公園がある。園内には、森のゾーン、広場のゾーン、水のゾーン、展示施設ゾーン、緑の文化ゾーンの計5つのゾーンがある。盆栽苑や華美な日本庭園があり、子供はもちろん大人でも楽しむことができる。
問題の写真は、公園内の展示施設ゾーンで撮影された。昨年12月5日から25日まで夜間開園され、カナールと呼ばれる大きな噴水を中心にイルミネーションで彩られた。
このイベントに参加していた怪談師ファンキー中村と家族が撮影したワンショットに、奇妙なビジュアルが写り込んでいたのが写真だ。よく見てもらいたい。中村の左側の矢印の先に、不思議な形をした光源が写り込んでいる。長く伸ばされた動物のような口。まるでタツノオトシゴ、いや伝説の龍ではないかと中村の周辺で囁(ささや)かれている。また奇怪な事だが、写っているものや背景はすべてブレているにもかかわらず、龍と思わしき物体だけはピントが合っている。
この龍は何ゆえ昭和記念公園に出現し、写真へと写りこんだのか。そもそも龍とは世界各国に存在する“伝説上の生物”である。古来から神と同等の位置づけをされており、神聖なものとされてきた。中国では皇帝のシンボルとなっており、<水中に棲み、時に竜巻となりて天空を自在に駆けり>、泣き声は雷雲を呼び、嵐を巻き起こすという。中国文化の伝来とともに「龍伝承」も日本文化に導入され、民衆に深く根付くことになった。民間では、水の神と信仰され、大雨、または日照りが続くと「龍神様がお怒りである。龍神様に生贄(いけにえ)を捧げねば…」などと畏怖された。 龍神伝説は日本各地に数多く存在している。そんの中でも特に有名なのが九頭竜で、箱根・芦ノ湖の伝説である。奈良時代のこと。芦ノ湖は万字池と呼ばれていた。この池には9つの頭を持つ毒蛇がおり、常に生贄を求めていた。村人達は竜の怒りを静めるために、白羽の矢で選ばれた家の娘を生贄に捧げていた。だが、村を訪れた万巻上人によって退治され、湖の底にある「逆さ杉」に鎖で縛(いまし)められた。その後、長い間湖底に留め置かれた竜は改心し、毒龍から龍神へと変化した。それを見た万巻上人によって九頭竜神社を設けられ、そこに奉られたという。
この九頭竜と縁がある伝承が立川市も含まれる東京都西多摩地域にも存在する。桧原村の九頭竜神社である。桧原村を拓(ひら)いた中村数馬守は南北朝の戦いの折、南朝側に従軍していた。その南朝の守護神が九頭竜であった。1336年、その守護神を武運長久を願い九頭竜神社へと祀(まつ)ったのだという。つまり、この写真は西多摩の龍が出現した様子をとらえたものではないだろうか。
この写真を撮影したのは、ホラー作家山口敏太郎の友人である、怖い話を語って聞かせる怪談師のファンキー中村。芸能を生業とするものである。どの仕事もそうかもしれないが、特に芸能の世界は厳しい。「戦場」にたとえてよく、中村はその世界で生きている。もしも、この龍が桧原村に祀られている九頭竜であるならば、「武運長久」を与えたのかもしれない。今年、ファンキー中村の動きに注目したい。