今季の覇者、広島と西武にはこの戦力補強において、一つの共通点がある。ドラフト指名選手を見極める眼力に長けている。今さらだが、広島は「育成のチーム」としての定評もある。かといって、他球団にも目利きと称される敏腕スカウトはいる。他球団との差は、育成にあるのではないだろうか。
ライバル球団のスタッフがこう言う。
「とくに広島がそうなんですが、下位指名の選手の選び方に特徴があるんです。『様子見』の選手を獲ってくるというか」
様子見。ドラフト候補のなかには、「指名にするかどうか」「支配下枠か、育成か」のボーダーライン上にいる選手も少なくない。前者の場合は、「もうちょっと、様子を見てから」と言って、次年度以降に指名を繰り越す。「素質はあるのだが、プロで通用するかどうかを見極める実績がまだ欠ける」という意味合いもあるそうだが、広島、西武は「素質が開花してからでは、他球団との競合になってしまう」とし、その年のうちに下位で指名してしまうのだ。つまり、指名してから育て直すのだ。
また、育成に関しても両球団にも特徴があった。
「担当スカウトが新人合同練習やキャンプにも顔を出し、『あの子はこういうふうに言わないとダメだから』『練習の意義、目的を考えるので、一人にさせてやる時間を作ってやって』と、二軍コーチに選手の性格を改めて伝えています。とくに、クセの強い選手に対してはそうしています」(球界関係者)
1位指名だが、マエケンこと前田健太を指名した06年、広島は二軍育成を早々と決めていたが、プロ一年目の07年は単に体を鍛えさせていたわけではなかった。前田を一軍の先発ローテーション同様、常に等間隔で先発登板させていた。
「西武の4番を任されている山川穂高は13年に指名されました。打撃力はピカイチでしたが、守備難で体重100㎏強の巨漢です。他球団は起用法が制限されるとし、指名回避でした」(前出・同)
しかし、守備難は少しずつ克服され、今日に至っている。長い目で見て、新人を育てる姿勢が重要となってくる。
「巨人、阪神はドラフトで好選手を指名していますが、見切るのも早い。即戦力と称される完成した選手ばかりを集めています」(ベテラン記者)
ドラフト下位指名選手も戦力になるチームは強い。今年のドラフト会議は例年以上に高校生の指名が増えると予想されている。だが、高校卒選手の大半は即戦力ではなく、育成のための長い時間が必要となる。レギュラー選手がベテランと呼ばれる年齢になったころ、若手が一人前になっている。これが、チーム補強の理想像だ。巨人は広島、西武の育成ビジョンを見倣うべきだろう。(スポーツライター・飯山満)